Go Toイートキャンペーンや時短営業への協力金など、飲食店を救うべくさまざまな支援策が講じられている。しかし店の状況によっては、休業しない方がメリットのある場合も少なくない。特集『外食大再編』(全8回)の最終回では、支援策の効果を総点検した。(ダイヤモンド編集部副編集長 大矢博之)
ついに法廷闘争になった時短営業要請
一律の支援策に大企業からは恨み言
新型コロナウイルスの感染拡大に伴う飲食店への時短営業の要請が、ついに法廷闘争へと発展した。
「営業を短縮しないことで社会やお客さまに危害を与えることはないと確信していた」――。3月22日、イタリアンレストラン「ラ・ボエム」など41店舗を展開するグローバルダイニングが、東京都の営業時間短縮命令は不当だとして都に損害賠償を求める訴訟を起こした。同日の記者会見で、長谷川耕造社長はこう強調した。
訴訟に至るまでには前段がある。首都圏に2度目の緊急事態宣言が発令される前日の1月7日、グローバルダイニングは「今の行政からの協力金やサポートでは時短要請に応えられない。午後8時までの営業では事業の維持、雇用の維持は無理だ」などという長谷川社長のコメントを発表し、緊急事態宣言が発令されても営業を続けると表明。実際に午後8時以降の営業も続けた。
東京都は2月下旬以降、時短営業をしていない施設に対して、新型コロナ対策の特別措置法に基づいて営業時間を短縮するよう要請。これに対してグローバルダイニングは3月11日、要請に応じない理由について、新型コロナ対策や経済対策に不備があり、「飲食店を狙い撃ちにした経済的我慢を強いる緊急事態宣言と時短営業要請については不信しかない」などと主張する弁明書を都に提出し、行政との対決姿勢を鮮明にした。
そして都は緊急事態宣言の解除が決まった3月18日、「午後8時以降も営業を続け、感染リスクを高めている。ほかの飲食店の営業を誘発する恐れがある」として、営業時間を短縮する命令を27店に出した。このうち26店がグローバルダイニングの店という“狙い撃ち”だ。
今回の訴訟でグローバルダイニング側は、都の命令は営業の自由や法の下の平等を保障した憲法に違反していると主張。また、損害賠償の請求が主な目的ではなく、「法的、科学的根拠があいまいなまま飲食店の営業を一律に制限することの是非や、過剰な規制や特措法の違憲性を問題提起したい」とし、賠償額は1店舗につき1日1円の4日分で104円とした。
コロナ禍で苦境にあえぐ飲食店に対してさまざまな支援策が講じられているものの、大企業の反発は依然として強い。例えば、時短営業の要請に応じた協力金は一律1日6万円。売上高の少ない小規模な店では恩恵が大きいが、大規模な店には焼け石に水だ。しかも当初は大企業が対象外にされた。
スシローグローバルホールディングスの水留浩一社長は、「ないよりはいいけど、公平性が全くない。われわれの店の1日の平均売上高は約100万円で、6万円で足りるかといったらそりゃ足りない」と語気を強める。
他にも、「時短営業するとかえって店内が“密”になる」「従業員を多く抱え、税金を多く支払って社会貢献の大きい企業が支援されていない」などと、外食企業の経営者の不満は募る。
一方、通常営業を強行したグローバルダイニングは好結果が出た。2月の既存店売上高が前年同月比122.8%と、コロナ禍以降で初めてプラスに転じたのだ。
時短営業への協力金などの支援策がある一方で、営業した方が利益につながるかもしれない。店によってその事情はさまざまだ。そこでダイヤモンド編集部では実際の飲食店4店のリアルな数字を基に、支援策の効果を検証した。