日本版「SPAC」の導入に反対する3つの理由、矛盾した汚い仕組みは必要ない!Photo:PIXTA

日本でも「SPAC(特別買収目的会社)」の導入に向けた議論が起こっている。米国ではSPACを通じたベンチャー企業の上場が流行している。しかし、筆者の率直な印象は「いかにもうさんくさい」。日本でのSPAC導入が実現しないことを切に願って、反対する三つの理由を述べる。このような矛盾した、しかも汚い仕組みは、日本の証券市場に必要ない。(経済評論家、楽天証券経済研究所客員研究員 山崎 元)

なぜ今さら日本でSPAC?
いかにも「うさんくさい」

 日本でもSPAC(特別買収目的会社)を導入するといいという議論が起こっている。SPACとは「Special Purpose Acquisition Company」の略語で、他の企業の買収を目的とする会社を上場させて資金を調達する仕組みで使われる特別目的会社のことだ。有望なベンチャー企業を見つけて、その会社とSPACを合併させることによって、ベンチャー企業の上場をより容易にして早める効果があるとされる。現在(当面のピークは昨年だったが)、米国では流行しており、多くのSPACが上場と資金調達を果たした。

 わが国でもよく言われる話だが、米国でも証券取引所のIPO(新規株式公開、初めての株式の売り出しと上場)の審査は面倒で時間が掛かるらしく、SPACを経由する上場は時間の短縮と手続きの簡略化が、ベンチャー企業にとってメリットになると言われている。

 一方、上場会社としてのSPACは、具体的な事業内容がないまま一定期間(通常は2年)のうちに買収対象企業を見つけるという触れ込みの、上場時点では事業の中身のない会社だ。なので、「空箱上場」などと言われることがあり、投資家の保護や、SPACの管理者の周辺で起こりうる利益相反などに問題があるのではないかと批判する声も少なくない。

 率直な印象を言うと、いかにもうさんくさい。