ひらたく言えば、飯塚被告は自分がハンドルを握っていたから取りあえず謝罪したが、悪いのは暴走したプリウスであって、製造元であるトヨタのせいである。自分には一切、非はないと宣言したのである。

 当然、遺族は納得できるはずもない。真菜さんの夫、拓也さん(35)は初公判後、記者会見で「私たち遺族の無念や2人の死に向き合っていると思えない」「私に視線を合わせるわけでもなく、誰に向かって謝っているのだろうと感じた」と憤りをあらわにした。

伝わらない怒りに
遺族は嘆息

 昨年12月3日に開かれた公判では、事故の目撃者が証人として出廷。「(プリウスは)ブレーキランプが点灯していなかった」「猛スピードで追い抜いていき危ないと思った」「減速せず赤信号の交差点に突っ込んだ」などと事故の状況を語った。

 同14日の公判では、弁護側が冒頭陳述で「ブレーキペダルを踏んだが利かなかった」と改めて過失を否定。そして、事故原因はプリウスが10年以上前に購入したもので「経年劣化で電子部品にトラブルが起きてブレーキが作動しなかった」と主張した。

 公判後に記者会見した拓也さんは、飯塚被告がパニックになっていたのに、アクセルを踏んでいないと認識していたという弁護側主張に「そんなこと、ありうるのか」と努めて冷静に疑問を述べた。

 今年4月27日に開かれた公判では、被告人質問が行われた。検察側の質問に「アクセルを踏んでいないのに加速した」「車を制御できずパニックになった」などと、事故の原因はプリウスであったという自説を強調。検察側から「踏み間違えはなかったか」と何度も問われても「一切ない」と強弁した。

 6月21日の公判では、拓也さんら遺族が「被害者参加制度」を利用し、飯塚被告に直接質問をぶつけた。「妻と娘の名前を言えますか」。ゆっくりとした語り掛けに、静まり返る法廷。「はい、真菜さんと莉子さんです」。

「漢字でどう書きますか」。少し言いよどみ、莉子ちゃんの名前は「難しい」ので分からないと答えた飯塚被告。自身が問われた過失についての認識を問われても「心苦しいが、過失はないと思っています」と言い放った。