崩壊状態の医療現場、相次ぐ自宅療養者の死亡、効果のない緊急事態宣言――コロナ禍での日本政府の無策ぶりが日々報じられているが、海外に居住する日本人に対してもしっかり支援しているとは言い難い。積極的に海外居住者へのワクチン支援を行う中国とは対照的で、その向き合い方には消極性さえうかがえる。(ジャーナリスト 姫田小夏)
中国、接種推進でも見せた電光石火の対応
新型コロナウイルスのワクチン接種は、世界各国で進んでいる。中国がいち早く国民へのワクチン接種に着手したことは周知のとおりだが、国外で生活する中国人に対しても積極的なワクチン支援を行っていることはあまり知られていない。
中国外交部によると、今年6月末の段階で、世界160カ国以上に散らばる170万人の在外中国人が、本国の支援によってワクチンを接種したという。
中国は世界的に感染拡大が進む2020年3月から、国外居住者保護のための活動を行っており、各国の大使館を経由して、マスクや消毒液などを含む健康キットの配布を行ってきた。今年春からは「春苗行動」というワクチン接種プログラムを実施し、アジアやアフリカなどで活動する中国人に対してワクチン提供を行っている(※筆者注:「苗」はワクチンの意)。
真っ先に行われたのが、コンゴ、アンゴラ、ジンバブエ、カンボジアなどの国々に在留する中国人へのワクチン提供だった。「一帯一路」建設を下支えするために世界に送り込まれている“同胞への支援”という側面もうかがえるが、一般企業の従業員や留学生もその対象となっている。都内の私大教授によれば「中国のパスポートを持つ中国籍の人であれば、誰でも接種することができる」という。