「健康のシルクロード」という言葉をご存じだろうか。世界がコロナ禍に見舞われる今、中国は“古代シルクロードの現代版”と呼ばれている「一帯一路」に、「健康のシルクロード」という“新メニュー”を加え、医療強国の地歩を固めようとしている。(ジャーナリスト 姫田小夏)
医療外交に熱心な中国
コロナ禍で中国は「一帯一路」の参加国に対して、より積極的な医療支援を行っている。チリ、香港、インドネシア、フィリピン、タイ、トルコ、ウクライナ、マレーシア、アゼルバイジャン、エジプト、モロッコ、パキスタン、ペルー、アラブ首長国連邦などの国・地域が、中国の製薬会社と購入契約をしている。中国製ワクチンの対外輸出も「健康のシルクロード」建設の一環だと捉えることができるのだ。
ワクチン以外にも実績を積んでいる。イタリアに対しては医療チームの派遣、セルビアに対してはウイルス検査研究所の設計参加や医療機器の寄贈などをしている。さらに、中国と欧州を結ぶユーラシア大陸の横断鉄道「中欧班列」は、「一帯一路」を象徴する輸送ルートだが、2020年は医薬設備や防護用品の欧州向け輸出に貢献した。
138カ国との間で「一帯一路」の協力文書に署名(昨年12月時点)している中国は、築いた「一帯一路」の輸送ルートやパートナー関係を活用し、コロナ禍の医療外交に乗り出しているというわけだ。