転職活動や仕事の人脈作り、情報交換などにビジネスSNSを利用している人も少なくないだろう。今年に入って、国産のビジネスパーソン向けSNSが次々と誕生している。「学びの共有」をコンセプトにした「intely」。エンジニアに特化した「Forkwell」など、日本独自の視点で展開をするサービスが、ここへきて増えている。

WEB上でスキルテストを受け、能力を数値化して公開できるビジネスSNS「Leanwork」

 10月にリリースされた「Leanwork」もその一つだ。ベースになるのは、LinkedInと同様に経歴を公開し、キャリアアップに結び付ける従来型のリクルーティングサービス。そこに「スキルの可視化」という視点を付加。ウェブ上で各種スキルチェックを行える点が、大きな特徴だ。

 現在、実装されているスキル判定は、適性検査SPIを始め、HTML、PHP、Java、MySQLなどのプログラミング能力、ウェブデザインに関するアプリケーション操作能力など。オンライン上でテストを行い、その結果を自身の“価値”として公開することができる。

「以前、外資系企業に所属していた際、人材の流動性が高かったことを目の当たりにしました。これからは国籍や年齢、性別などは関係なくなり、スキルをベースにした企業との関わり方や働き方が主流になるのではないかと、強く感じたのです。しかし、日本にはスキルにフォーカスしたプラットフォームがまだ存在していません。それで開発するに至ったのです」(leanworkを運営する株式会社クロスエージェント代表取締役の松田総一氏)

 開発にあたった松田氏によると、個々のスキルを数値化することにより、企業サイドとの交渉がスムーズになるという。企業が一番知りたいのは、その人の能力。それを具体的な数値で示すことにより、ミスマッチによる時間の無駄を削減できる。

 採用する企業のページには、ユーザーの登録情報が随時流れる。条件に合う人材や気になる人材を見つければ、その場ですぐにメッセージを送る機能も備わっている。

「キャリアアップを考えるユーザーが、ロールモデルになりそうな人を探せるようにとSNS機能も付加しました。その人がどんな考えやスキルセットを保有しているのかを見ることができれば、スキル取得のモチベーションアップになると考えています」(同氏)

 アメリカでは、人事担当者の9割がLinkedInなどのSNSを活用し、リクルーティングを行っている時代。雇用習慣が異なる日本では、これまでビジネスSNSは苦戦を強いられてきた。しかし、激変を余儀なくされている昨今の雇用情勢を考えると、日本のビジネスシーンにこういったウェブサービスが浸透していくのは時間の問題ではないかと筆者は考える。

「今後は、日本を含めたアジア圏で、人材の流動化をサポートするプラットフォームにしていきたいと考えています。企業の人事担当者が時間管理できる機能を搭載したり、説明会などもオンライン上で開けるようにしていきます。オフラインにつなげる機能として、スキルチェックにより可視化されたプロフィールを、名刺として発行する機能なども構築しているところです」(同氏)

 同社は、間もなくシンガポールに会社を設立予定。その後はタイ、ベトナム、上海などで本サービスを展開していくプランを温めている。アジア市場をにらみ、TOEICなどの語学系のスキルチェックを増やしていく予定だ。

 今後も厳しい経済・雇用情勢が続くようであれば、自身の「能力」をこれまで以上に明示することを求められるようになるだろう。ビジネスパーソンにとっても、自身のスキルを一度可視化してみることはプラスになるのではないだろうか。

(吉田由紀子/5時から作家塾(R)