株価は美人投票

 経済学者のケインズは「株価は美人投票だ」と言った。この言葉は有名であるが、注意を要するのは当時の美人投票が今の美人投票とは異なっていた、ということである。

 当時の美人投票は、優勝した候補者に投票した審査員も賞品がもらえた。そうなると審査員は、自分が美人だと思う候補者ではなく、優勝しそうな候補者に投票しようと考えるわけである。これが株価と似ている、とケインズは言うのだ。

 株式投資においても、自分が良い銘柄だと思う銘柄ではなく、他の投資家が買いそうな銘柄を買う方が儲かる確率が高いし、自分が上がると思うタイミングではなく、他の投資家が上がると思いそうなタイミングで買う方が儲かる確率が高い、というわけである。

 自分が候補1を美人だと思っても、候補2が登場したときに周囲の審査員が拍手をしたならば、候補2が勝つだろうから、自分も候補2に投票すべきである。さらに言えば、拍手の数も重要であるが、周囲の噂に耳を傾けて、優勝しそうな候補が誰であるかを考えるべきなのである。もはや、壇上の候補者をしっかり観察する必要などないわけだ。