2021年は、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)による不況から、景気回復に向かう1年となりそうだ。有効なワクチンの開発が進んだことで、経済活動が早期に再開されるとの楽観的な見方が広がっている。ただし、世界経済がパンデミック前の水準を取り戻す道程は長く、財政・金融政策によって景気回復の流れを途絶えさせないよう、支援し続ける必要があろう。
株式市場では、金融相場から業績相場への移行が焦点になると思われる。中でも、割安感があり景気感応度が高い日本株が恩恵を受けやすく、市場では日経平均が3万円を回復するとの見方も増えている。ただし業績相場への移行過程では、相場にストレスがかかることも想定され、投資家には忍耐と長期的な投資判断が求められる1年となりそうだ。
【2021年の世界経済】
「長くて困難な登り坂」の第一歩
国際通貨基金(IMF)が10月に発表した世界経済見通し(WEO)によれば、2020年に▲4.4%と大きく落ち込んだ世界経済は、2021年には+5.2%成長と回復に向かう見込みだ。日本の経済成長率も同様に、2020年に▲5.3%と落ち込んだ後、2021年は+2.3%と反発が予想されている。
このように、2021年の世界経済はV字回復が見込まれているものの、2020~21年の2年間を通じた経済成長は、ほぼフラット(横ばい)だ。しかもそれは、回復力が高い新興国を含んだ予想であり、先進国に限って見れば、2021年中に2019年の経済水準(物価変動を考慮せず)を回復できるのは、ノルウェー、韓国、アイルランドなど一部に過ぎない。
さらに、日本が2019年の経済水準を回復するのは2024年、米国とドイツが回復するのは2022年と予想されている。パンデミックに伴う先進国のGDPギャップの解消には、数年かかりそうだ。
経済見通しの改善に伴い、株式アナリストによる2021年の世界の企業業績予想も+25%強の増益見通しへと上方修正されている。もっとも、2020年の企業業績は▲16.5%の減益になると見込まれるため、2年間を通じてみれば利益の伸び率は4%強に留まりそうだ。
上述のIMFのレポートには、「長くて困難な登り坂(A Long and Difficult Ascent)」という副題が付けられているように、2021年はパンデミック前の状態に戻るまでの長い道程の第一歩と捉えたい。