北朝鮮の巡航ミサイル発射を
探知できなかった日米韓

 北朝鮮は13日、新型の長距離巡航ミサイル発射に成功したと明らかにした。

 朝鮮中央通信によれば、発射は11、12の両日に実施した。ミサイルは「だ円および8の字」の軌道を、2時間6分20秒かけて1500㎞飛行し、目標に命中したという。

 米韓両軍はミサイル発射情報を発表しておらず、「ミサイルの探知に失敗した可能性が高い」と指摘されている。米インド太平洋軍は声明で「北朝鮮が軍事開発に注力し、国際社会への脅威であることを示す」と警戒感をあらわにした。

 巡航ミサイルは、飛行機のように翼とジェットエンジンで水平飛行するミサイルである。多くの長距離ミサイルのように弾道飛行はせず、低い高度で飛行するためレーダーに探知されにくい。また、大きな搭載空間を利用した制御機器を内蔵するため、目標への誘導精度が比較的高いなどの特徴がある。

 低い高度で飛来する巡航ミサイルは探知そのものが難しく、現在のミサイル防衛網では対処できない可能性が高い。そればかりでなく、韓国国防部の徐旭(ソ・ウク)長官が国会質疑で「北朝鮮の巡航ミサイルに小型の核弾頭を装着できるか」との質問に対し、「可能と判断している」と答弁したように、非常に危険な兵器である。

 北朝鮮は13日、長距離巡航ミサイル開発事業を「戦略兵器」と規定し、「もう一つの効果的な抑止手段を保有するという戦略的意義を持つ」と述べている。これは、事実上韓国を狙うことができる戦術核能力であることを、はばかることなく誇示したものである。

 そして、韓国のみならず日本のほぼ全土が射程に入るため、日本にとっても脅威である。

巡航ミサイル発射に
沈黙する韓国政府

 韓国政府は、今回の北朝鮮の巡航ミサイル発射に対し、遺憾表明をするどころか、脅威や緊張を高める行為もしなかった。

 こうした韓国政府の姿勢に対し、野党「国民の力」は14日の外交・統一・安保分野の対政府質問で、「韓米ミサイル防衛システムに大きな穴があけられた」と主張した。

 北朝鮮の駐英公使を務め、のちに韓国に亡命した太永浩(テ・ヨンホ)議員は、「国民が不安に思っている」「青瓦台では国家安全保障会議の招集さえなかった。今年だけで北朝鮮は巡航ミサイル発射実験を3回も行ったが、韓国政府は何の警告や抗議もなく曖昧な立場で一貫している。誰が韓国の安保を心配するのか」と重大な懸念を表明した。

 だが、韓国政府は同日、北朝鮮のミサイル発射に関する一切の評価を事実上保留した。