レビュー
開催に当たり、賛否が割れた東京オリンピック。開会式直前、日本テレビの報道番組「news every.」の藤井貴彦キャスターが、番組内で発した言葉が話題となった。藤井キャスターは視聴者の複雑な気持ちに寄り添いながら、大会を目指して一心に努力を重ねてきた選手たちに敬意を表し、共感を呼んだ。
「言葉で思いを伝えること」は難しい。特に、考え方も境遇も異なる不特定多数に向けた発言は、時に本意でない捉え方をされ、誤解を招くこともある。しかし同時に、表現ひとつで人の心を解きほぐし、前向きなエネルギーに転換させることができるのも、言葉の持つ力である。
本書『伝える準備』は、“言葉のプロ”であるアナウンサーとなって20年超のベテラン、藤井貴彦氏初の著書である。心に響く言葉はどのようにして生まれるのだろうか。藤井氏は「伝えるための準備」の大切さを説く。
あとで悔やまれるような発言は、往往にして勢い任せの不用意なものである。日頃から言葉の引き出しを増やし、相手をきちんと見て、最適な言葉を選ぶ。この小さな積み重ねが言葉の感性に磨きをかけ、ひいては相手に伝わる言葉となる。
本要約では、著者が実践している言葉選びの習慣や「5行日記」を紹介する。伝わる言葉を紡ぐための不断の努力、テクニックは大いに参考になる。
コミュニケーションをより良いものにする「伝える準備」。ぜひ今日から始めてみてはいかがだろうか。(矢羽野晶子)