タモリさんといえば、伝説の番組『笑っていいとも!』では、日替わりで出演するあらゆるジャンル、あらゆる年齢層のゲストを相手に、会話が途切れることなく視聴者を惹きつけるトークを生放送で繰り広げていました。こうしたタモリさんのトーク術には学ぶべき点が多くあります。今回は『1秒で気のきいた一言が出るハリウッド流すごい会話述』の中から、タモリさんに学ぶ会話が続くトーク術のカンタンな方法を紹介します。

「会話のネタが見つからない」と、
プロの芸人だって悩むことがある

 会話の大きな悩みとして、「会話のネタが見つからない」があります。特に、年齢や趣味などがまったく異なる人との会話のネタに悩んでいる人も多いと思います。実は、テレビ番組の裏側を暴露すると、会話のプロである若手お笑い芸人が商店街ロケに行っても、70代のお婆さんとの会話がまったく膨らまないというような事はしょっちゅう起きているのです。

 そのため、実は私たち放送作家が芸人とお婆さんの会話が膨らむような仕掛けを、裏で考えていたりします。そして、私は放送作家として、タモリさんのトーク方式をとても参考にしています。

 今回は一般の人でも参考になる、会話のネタに困らないタモリ式トークのやりかたについて、深く掘り下げてみたいと思います。

 まず初めに、多くの人がタモリさんとは違って、どうして会話のネタに詰まってしまうのかを考えます。実は、本人が認識しているかどうかは別にして、タモリさんのトークには必ず目的意識があります。話している相手がよく知っている「○○って何?」とか、「やせたのはどうして?」とか、何らかの事をタモリさんが知りたがっています。

 翻って、会話のネタに困ってしまう人は、「とりあえず、共通の話題をしておけばいいんだけど……」といった程度の構えでいる事が多いと思います。つまり、多くの人は「この会話で何を生み出すのか」という目的意識がぜんぜん明確になっていないのです。

 例えば、「突然、雨が降ってきましたね。」という会話を振ったとします。ただ、話を合わせたいだけで、この話題を振ったのなら、相手に「そうですね」と答えられたら、それで話しが終わります。

 しかし、「家の外に洗濯物を干しっぱなしにしてきたという愚痴を言いたい」という目的があればどうでしょう。相手に、「そうですね」と素っ気なく返されても、まだまだ語る事はたくさん出てくるはずです。

タモリの「髪切った?」は定番イラスト:JERRY