自民党総裁選に4名の候補が出そろい、9月29日の投開票日に向けて政策提示や論戦が展開されている。一方、立憲民主党は「アベノミクス検証委員会」を立ち上げ、批判的な検証結果を総選挙に向けたキャンペーンに利用しようとしているようだ。
そこで改めて第2次安倍政権期の経済的な実績をレビューし、経済政策面で何を継承し、何を修正、追加すべきか考えてみよう。
結論から言うと、「アベノミクス3本の矢」として提示された最初の2つ「デフレ脱却のための大胆な金融緩和」「機動的な財政政策」については、今や日米欧既存先進諸国では事実上の政策スタンダードになった感がある。日本ではすでに金融緩和政策の効果は尽きているものの、どの候補が自民党総裁を経て首相になったとしても、今の枠組みから大きく離れることはできないだろう。
むしろ重要な違いが生じるのは、「第3の矢、成長戦略」に盛り込む各論である。その各論として何が望まれるのか。それも安倍政権期の実績レビューから示唆されることは少なくない。
景気循環と政権の運不運
政権の経済政策の実績を公平、公正に評価することは実はそう簡単ではない。どのような経済政策を採るかで、景気動向にも長期的な経済成長率にもプラスマイナス何かしらの影響を及ぼす。しかし複雑な市場経済活動や景気循環は、そもそも政府の経済政策以外の要素によって左右される部分が多いことを念頭に置こう。
また経済政策の効果を直接の対象にせず、ある政権期の経済的な実績を単純に評価する場合でも、その政権の開始時と終焉時が景気の波のどの局面かによって大きな運不運が生じる。
この点で非常に運が良かったのは例えば小泉内閣だ。小泉純一郎氏が首相に就任した2001年4月は世界的なITバブル崩壊による景気後退期だったが、翌2002年1月には景気は底を打ち回復が始まった。首相を退いたのが2006年9月だが、翌2007年の夏には米国でサブプライム危機が勃発、2008年はリーマンショックで世界不況となった。小泉首相は幸運にも危機の連鎖が始まる前年に身を引いたのだ。