国税が優遇税制にメス!「みなし寄附金」のターゲットにされ窮地に陥る法人は?写真はイメージです  Photo:PIXTA

「みなし寄附金」制度。一般の人はあまりピンとこないかもしれないが、公益法人等に与えられた優遇税制だ。コロナによって財政支出が大幅に増加し、東京オリンピック・パラリンピックの宴の後には多額の赤字のつけが押し寄せる。そんな中、財務省がこっそり、この優遇税制の見直しに着手した。改正の背景と内容をつぶさに見ると、税務調査の次のターゲットがおぼろげに浮かび上がる。(元国税査察官・税理士 上田二郎)

返済を背負うのは子どもたち
借金大国からの脱出も選択に

 政府の来年度予算編成に向けた各省庁の概算要求が出そろい、総額は過去最大の111兆円超になった。最も要求額が多いのは厚生労働省で、高齢化の進展によって年金や医療、介護などの社会保障費が膨らんだことに加え、新型コロナウイルスなどの感染症対策を強化する費用を盛り込んだ結果、過去最大の34兆円規模になっている。

 概算要求通りに予算案が通れば111兆円の調達に迫られるのだが、20年度の一般会計決算概要によれば、国税収入は約61兆円(過去最高)しかない。よって、今年度に前年並みの国税収入が確保できても、約50兆円を国債などの新たな借金を増やして調達するか、国が保有する株式や国有地などを売却しなければならない。

 一方、いわゆる「国の借金」が21年3月末に1216兆円を突破し、過去最高を更新した。増加幅は近年10兆~20兆円程度で推移していたが、コロナによる財政出動で大幅に拡大した。

 少子高齢化によって現役世代が減り、リタイア世代が増える構造の日本社会にコロナが追い打ちをかけ、経済が墜落して税収の落ち込みが見込まれる一方、コロナ対策や東京オリンピック・パラリンピックの経費精算などによる大幅な歳出増加が避けられない。このまま打つ手なしなら、借金が雪だるま式に増えていくのは目に見えている。

 こんな借金大国に未練はないとばかりに、「頭のいい富裕層」の日本脱出が続出して所得税収が減少し、グローバル企業が脱出して法人税収が減少した後に多額の借金を背負うのは今の子どもたちだ。

 そこで、危機的な財政状況にあらがうために財務省が乗り出したのが、これまで既得権益の壁に阻まれて手を出せなかった優遇税制の見直しである。