前回のコラム『「タワマン節税」もアウト?税務署が異例の判断を下した4つの理由』では、「財産評価基本通達6項(総則6項)」によって高額マンションによる節税対策が否認された事例を紹介した。今回は「もう一つの総則6項適用事案」と呼ばれる高額マンション否認案件を取り上げる。こちらも、行き過ぎた節税対策には「総則6項」という切り札をもって封じようという、税務当局の強い意思が感じられる判決だった。(税理士・OAG税理士法人資産トータルサービス部部長 奥田周年)
高額マンション節税を否認した
「もう一つの総則6項事案」
本件では、被相続人(享年89歳)が亡くなる2カ月前に銀行からの借り入れによって約15億円で購入したタワーマンションについて、相続人は財産評価基本通達に従う形で土地については路線価(公示価格の80%)を、建物については固定資産税評価額(建築費の50~70%)を基に算出し、相続税の申告を行った(不動産に関する相続税の基本的な考え方については、前回コラムを参照してほしい)。
ところが、相続開始から4年半を経過した2017年12月、税務署から相続税の更正処分と過少申告加算税の賦課決定処分が行われた。つまり、申告内容には誤りがあり、納税額の修正が必要と判断されたのである。相続人は先述の算出方法により、タワーマンションの評価額を土地・建物合計で約4.8億円としていた。一方、税務署側は鑑定評価額の約10.4億円で計算すべきと主張したのだ。
この結果、相続人は合計で約1億円の追徴課税の支払いが命じられた。相続人はこの処置を不服として訴訟を起こした。
更正処分の根拠になったのは今回も、財産評価基本通達6項(総則6項)に記された「この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価値は、国税庁長官の指示を受けて評価する」との一文だった。
なお本件は2021年4月27日、東京高裁での控訴審判決でも原告(相続人)側の主張は認められず、控訴は棄却された。またしても「総則6項」によって、高額マンション節税が否認される結果となったのである。