創業100年の老舗ながら
海外売上高比率は40%

創業100年の刻印機メーカー、経営難を乗り越え14カ国に販売網広げた社長の手腕「マーキンボックス」を手に花輪社長(著者撮影)

 消費者の目には留まりにくいが、工業製品のトレーサビリティー(移動を追跡確認できる状態)を担保し、品質管理に不可欠なのが「刻印」である。製品名、シリアル番号、製造元のロゴマーク、2次元コードなどを刻み込み、製品が動き続ける限り消えることはない。

 一見、地味なこの分野で世界的な刻印機メーカーが東京都墨田区に、本社を置く東京彫刻工業だ。創業100年を超える老舗でありながら、世界14カ国に代理店網を築き、海外売上高比率はほぼ40%に達する。

 海外展開の立役者が、3代目社長の花輪篤稔(48歳)である。

 「自動車や電車車輌、航空機など耐久性が必要な部品には“ドットマーカー”と呼ばれる刻印機が使われます。半永久的に刻印が残るからです。アメリカの民間宇宙船の部品にも当社のドットマーカーが使われています」

創業100年の刻印機メーカー、経営難を乗り越え14カ国に販売網広げた社長の手腕ドットマーカーによる刻印サンプル(同社提供、以下同)

 刻印には手打ち、刃物による彫刻、プレス、レーザーなどさまざまな方法があるが、ドットマーカーは数値制御でピン先を対象物に打ち付けてドットによって文字を打刻する方式だ。

 刃物を使う汎用型刻印機を作るメーカーは国内に数社あるが、ドットマーカーのメーカーは2社しかなく、同社はシェアトップ。海外でも15~20社ほどしか存在せず、その中でも10本の指に入るという。