掘削による土壌の浄化より、コストを3~5割削減
「環境問題は学際であり、業際であり、国際なのです。グローバルな課題であって、そこに国境はない。チャンスがあれば海外に行きたいと創業当初から考えていました」
エンバイオ・ホールディングス(以下、エンバイオ)社長の西村実(62歳)は力強く語る。同社は土壌汚染対策の専門企業であり、その場において薬剤や微生物などを使って土壌を浄化するサービスを2003年に日本で初めて商用化した。これを「原位置浄化」という。
同社では現在、中国・南京市に独資で現地法人を持ち、土壌汚染の対策事業を推進している。また、自然エネルギー事業にも取り組んでおり、ヨルダンでは太陽光発電を用いて地下水をくみ上げ供給する水資源開発プロジェクトを2020年7月から開始、さらにトルコにおいてはバイオマス・ガス化発電設備の建設工事に着手した。1カ所で1.9メガワットの発電規模を持ち、21年度中に稼働予定だ。
従来は汚染された土壌を掘削して新しい土壌と入れ替える工法が主流だったが、費用が高額になり、トラックで土壌を運搬するため環境負荷も大きかった。原位置浄化は汚染土壌に薬剤・微生物を注入して分解、無害化する技術である。掘削工法に比べて3~5割もコストを削減でき、稼働中の施設でも施工可能だ。建屋内の床から注入もできるという。
「かつては、心配だからコストがかかっても土壌を入れ替えるという考え方でしたが、最近では法律を守って浄化できるならコストが安い方がいいという発想に世の中が変わってきました。もちろん、当社も掘削除去を行っており、原位置浄化と併せてケースバイケースで活用しています」と西村は語る。
日本では2003年に土壌汚染対策法が施行され、掘削除去による完全浄化の動きが強まったが、土地所有者への経済的な負担が重くなった。そこで、10年に改正されて過剰な対策を抑制する措置が取られ、さらに18年にも改正されて、リスクに応じた規制の合理化が進められた。つまり、土地の利用に応じて健康への悪影響がない場合は、汚染を完全に除去しなくてもリスク管理ができればよいと変化してきたのだ。これが原位置浄化への追い風となり、エンバイオの業績を後押しした。
この「土壌汚染対策事業」に加えて、同社事業の2本目の柱が「ブラウンフィールド活用事業」である。