わたしたちはいま、スマホの普及に伴う情報過多とコロナ禍によって多くのストレスを日常的に抱え、「疲れがなかなかとれない」「むしょうにイライラする」といった「脳の疲れ」が原因の症状が出やすくなっている。
そこで読んでおきたいのが、イェール大で学び、精神医療の最前線である米国で長年診療してきた精神科医・久賀谷亮氏が、「脳の疲れ」を解消できる「科学的に正しい」脳の休め方を伝授している『脳疲労が消える 最高の休息法[CDブック]』だ。
本書は、シリーズ累計28万部を突破しているベストセラー『世界のエリートがやっている 最高の休息法』の内容をコンパクトに凝縮し、さらに久賀谷氏監修の「特別音源CD」を付属した実践編だ。
今回は『脳疲労が消える 最高の休息法[CDブック]』より一部を抜粋・編集し、脳をリフレッシュできるとっておきの呼吸法をご紹介する。(構成/根本隼)

【アスリートも実践!】ストレスや逆境に対処する力「レジリエンス」が高まるメンタリティとは? Photo: Adobe Stock

ストレスは将来への不安で水増しされている

 レジリエンスという言葉をご存じですか?もともとは変形した物質が元に戻ろうとする「復元力」を指す物理学の用語でしたが、ポジティブ心理学では心にかかったストレスに対処する力を意味しています。

 レジリエンスの低い心は、苦境に立たされるなど一定の負荷がかかると“折れて”しまいます。レジリエンスとは心の平静を保つ能力であり、その意味では脳の休息の基礎とも言えます。

 苦境をどう乗り越えるかは各自の問題ですが、1つだけ言えることがあります。それは、ほとんどの苦難は、将来への不安で水増しされているということです。たいていの場合、目の前にあるトラブルそれ自体は、大したものではありません。

 心のレジリエンスを超えるような大きな負荷は、“いまここ”にはないところ、つまりは未来から前借りしたものです。裏を返せば、いまに目を向けることこそが、心の復元力を高める最もシンプルな方法なのです。

走り続けられる人は「ゴール」を見つめすぎない

 たとえば、トライアスロンのアイアンマン・ディスタンスという規格のレースでは、水泳・自転車・マラソンを併せて約226kmを走破しなければなりません。私も個人的にトライアスロンを継続するなかで実感していますが、過酷な競技に臨むアスリートのメンタリティは、レジリエンスの本質に通ずるものがあります。

 あまりにも長く苦しい道のりの途上で疲れ果てないためには、何より重要なのは、目前の一歩にフォーカスする力です。はるか遠くのゴールではなく、“いまここ”に目を向けなければなりません。勝負するからには負けたくない――その気持ちはとても自然ですが、競争心ほど私たちの脳を疲弊させるものはありません

ストレスによる身体の痛みを軽減するリラックス法とは?

 一方、心の平静を保つことは大切ですが、それを上回る負荷がかかり続けた場合、それは身体の不調として現れてきます。

 脳の状態は、自律神経やホルモンを介して身体に反映されます。脳の疲労蓄積がひどくなると、身体の一部にほてりや疲労感が生まれ、ひどいときには局所的な痛みが発生しますが、このような身体の痛みや違和感に有効なのが、ボディスキャンです。

1)横たわって、呼吸に注意を向ける
・イスに座りながらやってもOK
・呼吸に伴ってお腹が上下する感覚なども意識

【アスリートも実践!】ストレスや逆境に対処する力「レジリエンス」が高まるメンタリティとは?

2)左足のつま先に注意を向ける
・足裏が靴や靴下に触れる感覚は?
・足の指が隣の指と触れ合う感覚は?

【アスリートも実践!】ストレスや逆境に対処する力「レジリエンス」が高まるメンタリティとは?

3)左足に息を吹き込む
・左足つま先を「スキャン」する
・吸うとき:息が鼻から入り、身体を通って左足つま先に吹き込まれる
・吐くとき:左足つま先にある空気が、身体を通って鼻から出ていく

【アスリートも実践!】ストレスや逆境に対処する力「レジリエンス」が高まるメンタリティとは?

4)同様のプロセスを全身で
・左の足先から左脚全体のスキャンが終わったら、右脚、左右の腕、腹部や頭などでも同様に
・痛みがある部分を観察し(痛みの強さ・性質の「ゆらぎ」に気づく)、その部分を同様にスキャンする

【アスリートも実践!】ストレスや逆境に対処する力「レジリエンス」が高まるメンタリティとは?

 この休息法は痛みだけでなく、こりやだるさのような疲労感にも効果が見込めます。身体の各部分に穏やかな好奇心を向けて、痛みにどんな波があるのかなどにも注意してみましょう。痛みを客観的に見つめることで、「痛み」と「自分」とを同一視しなくなることが第一歩です。

(本稿は、『脳疲労が消える 最高の休息法[CDブック]』から一部を抜粋・編集したものです)