わたしたちはいま、スマホの普及に伴う情報過多とコロナ禍によって多くのストレスを日常的に抱え、「疲れがなかなかとれない」「むしょうにイライラする」といった「脳の疲れ」が原因の症状が出やすくなっている。
そこで読んでおきたいのが、イェール大で学び、精神医療の最前線である米国で長年診療してきた精神科医・久賀谷亮氏が、「脳の疲れ」を解消できる「科学的に正しい」脳の休め方を伝授している『脳疲労が消える 最高の休息法[CDブック]』だ。
本書は、シリーズ累計28万部を突破しているベストセラー『世界のエリートがやっている 最高の休息法』の内容をコンパクトに凝縮し、さらに久賀谷氏監修の「特別音源CD」を付属した実践編だ。
今回は『脳疲労が消える 最高の休息法[CDブック]』より一部を抜粋・編集し、ストレスを減らし感情をコントロールできるようになる呼吸法をご紹介する。(構成/根本隼)

「ストレスに悩まない人生」を手に入れるために必要な「心のトレーニング」とは?Photo: Adobe Stock

無気力やイライラを癒やす休息法のノウハウとは?

 注意散漫、無気力、イライラなどは脳疲労のサインです。その根本的な原因は、意識がつねに過去や未来ばかりに向かい、「いまここ」にない状態が慢性化していることにあります。現在に意識を向ける「心の練習」をすることで、疲れづらい脳をつくっていきましょう。

1)基本姿勢をとる

「ストレスに悩まない人生」を手に入れるために必要な「心のトレーニング」とは?

・イスに座る(背筋を軽く伸ばし、背もたれから離して)
・お腹はゆったり、手は太ももの上、脚は組まない
・目は閉じる(開ける場合は、2メートルくらい先をぼんやり見る感じで)

2)身体の感覚に意識を向ける

「ストレスに悩まない人生」を手に入れるために必要な「心のトレーニング」とは?

・接触の感覚(足の裏と床、お尻とイス、手と太ももなど)
・身体が地球に引っ張られる重力の感覚

3)呼吸に注意を向ける

「ストレスに悩まない人生」を手に入れるために必要な「心のトレーニング」とは?

・呼吸に関わる感覚を意識する(鼻を通る空気/空気の出入りによる胸・お腹の上下/呼吸の深さ/吸う息と吐く息の温度の違いなど)
・深呼吸や呼吸コントロールは不要(鼻呼吸がオススメ。呼吸が向こうからやってくるのを待つ)
・呼吸に「1」「2」…「10」とラベリングするのも効果的

4)雑念が浮かんだら……

「ストレスに悩まない人生」を手に入れるために必要な「心のトレーニング」とは?

・雑念が浮かんだ事実に気づき、注意を呼吸に戻す
・雑念は生じて当然なので、自分を責めない

「何もしない」状態を脳に覚えさせる

 ご紹介したのは、マインドフルネス呼吸法などと呼ばれる基本姿勢です。呼吸法というと、ふつうは息のリズムや深さなどをコントロールして、何か特別な意識状態を引き起こす訓練をイメージしてしまいますが、この場合は“正反対”です。

 呼吸をコントロールする必要は一切ありませんし、深呼吸も不要です。呼吸が起こるがままに身を委ねて、あたかも他人の呼吸であるかのように観察するのが、マインドフルネス呼吸法の基本です。

 それ以外は本当にシンプルで、ほとんど何もすることがありません。というよりは、「何もしない状態」を脳に覚えさせる練習だと言ってもいいでしょう。

身体の感覚に注意を100%向ける

 かといって、何も考えないのではなく、自分自身の感覚や呼吸に並大抵ではない注意を向けるのです。身体の感覚や呼吸という当たり前な生理現象に、ふだんではちょっと考えられないくらいの好奇心や関心を持ってみましょう。

 はじめに、まずは自分の身体の感覚に意識を向けてみます。足の裏が床に触れている感覚はあるか?お尻がイスに触れている感じは?身体全体が地球に引っ張られる重力の感覚にも気づくかもしれません。

1つひとつの呼吸に注意を研ぎ澄ます

 身体の感覚にひととおり注意を向けたら、次は呼吸を意識します。コツは、呼吸に関わる身体の感覚に注意の矛先を向けることです。鼻呼吸をしていれば、空気が鼻を出入りする感じに気づくはずです。息を吸ったときに胸やお腹が上下する感覚はどうでしょうか?呼吸の音は聞こえますか?

 慣れてきたら、どんどん細かいところに注意を向けていきましょう。吸う息と吐く息では温度が違いますね。息を吸うときにはまず胸が膨らむけれど、吐くときにはお腹が先にへこむといったことにも気づきます。

 また、呼吸はどれも同じではありません。1回、1回の呼吸の深さにも違いがあるはずです。はじめて気づいたかのように、そうしたこと全部に新鮮な好奇心を向けます。

雑念が浮かんだら、呼吸に注意を戻す

 おそらく1分もしないうちに、あなたの心のなかには雑念が浮かんできます。呼吸に意識を向けていたはずなのに、仕事のことや家族のことなど、いつのまにか別のことを考えています。

 ではどうすればいいのか?やることは2つです。まずは、雑念が浮かんできたという事実に“気づく”こと。そしてそのあと、やさしくゆっくりと“呼吸に注意を戻す”ことです。

 どれだけ呼吸に意識を戻しても、おそらく雑念は何度も浮かんでくると思います。それでもやることは同じ。10回流されれば10回戻す、それだけのことです。

「雑念まみれ」の状態を自覚することが大事

 呼吸は意識の錨です。広大な海に浮かんでいるあなたの意識の周囲には、大小さまざまな潮の流れや大波といった雑念がやってきます。そのたびに、意識は流されそうになりますが、錨があれば大丈夫です。呼吸さえ見失わなければ、遠くまで流されることはありません。

「ストレスに悩まない人生」を手に入れるために必要な「心のトレーニング」とは?

 雑念を消すことが目的ではありません。むしろ、いかに自分の心が“雑念まみれ”なのかを、まず知ることが収穫です。脳疲労を抱えている私たちは、いつも雑念の存在に気づくことなく、それらに流されるがままになっています。「気づく」だけでも大きな前進なのです。

(本稿は、『脳疲労が消える 最高の休息法[CDブック]』から一部を抜粋・編集したものです』)