官僚と議論する自民党、官僚を管理する民主党

宇佐美 官庁を辞めて外資系金融機関やコンサルタントに転身した人って、日本の将来に失望している人が多いんです。元々「日本をなんとかしたい」と思って官庁に入っただけに、失望の度合いがとても深くて「どうせ日本なんてもうダメだろ」ということをよく言います。逆に「今は個々人がグローバルに競争する時代だから、飢える人が出ようが仕方がない」というドライな主張をすることで、日本を見捨てることを自分に納得させている部分があると感じます。

竹内 宇佐美さんも失望したのですか?

宇佐美 失望しましたね。いまの日本の政治状況では、自分のような直情的なタイプはいい仕事ができないなと思いました。政治家も役人も小ずるい人が跋扈するようになりましたからね。

 ただ、辞めたのに何を言っているんだ、と言われるかもしれませんが、いまも「経産省魂」は持ち続けているつもりです。経産省内から自分が抱えていた問題意識を、今度は民間の立場でビジネスとして解決できないかなと。

竹内 でも、そもそも自分の所属している組織に失望していないサラリーマンなんているのかな。組織を変えようと頑張れば頑張るほど、邪魔する人がたくさん出てくるものですから。

宇佐美 私も最初は「自分が経産省を変えてやるんだ」と思って働いていました。でも、民主党政権になってからはそういった考えを持てなくなりました。「政治主導」の名の下に政治家が好き勝手しているのを見ているうちに、自分は所詮一官僚に過ぎないんだ、ということを良くも悪くも痛感させられました。手の届かない政治の部分が崩落してしまうと、どうしようもできませんから。やっぱり、政治家がしっかりしないと役所は立ち直らないと思います。

竹内 程度の差はあっても、いつの時代も政治家には毀誉褒貶があるようにも見えるのですが、自民党は違いましたか?

宇佐美 あまり自民党を褒める気もありませんが、自民党政権下では大臣などの有力な国会議員は官僚としっかり議論して物事を決定していました。政治家の政治決定と官僚による事前検討のバランスが民主党政権よりはずっとよかったと思います。省庁間の連携にしても、特に小泉政権から麻生政権までは、政治家が主導してテーマを設定し、官僚と協働しつつ、省庁間の調整を取り仕切ることは珍しいことではありませんでした。

竹内 民主党は?

宇佐美 民主党政権になってからは、政治家が物事を一方的に決めて官僚を管理する、という方向に変わっていきました。マニフェストに代表されますけど、おかしいことでも、政治家の決めたことには異論を挟んではいけないような雰囲気ができあがった。

 おかしいことはまかり通るのに、こちらが真剣に考えて未来に向けた提案をしても否定されてしまう。「官僚が偉そうなことを言うな」と政治家に怒られたり、蓮舫さんじゃないけど一方的に官僚が叩かれたりしてしまうので、積極的な提案は行いづらくなりました。今、色々問題が指摘されているエネルギーの固定価格買取制度にしても、CO2の25パーセント削減にしても、官僚としっかり議論せずに一方的に決められたものでした。逆に、マニフェストが行き詰まってからは、手のひらを返したように官僚機構に全面的に依存するようになるんですけどね。