「出世しようとする」人が組織にとって大問題

宇佐美 一番厄介なのは、「出世しようとする人」ですよね。そういう人は、上司にゴマをすって、部下を酷使することによって結果を出すので、ほどほどに出世してしまうんですよ。ただ、そういう人は権力者にすり寄ってきただけで、自分で道を切り拓いてきたわけではないので、リーダーの立場に立つと政策があっちに行ったりこっちに行ったりとブレて骨太な政策がつくれません。

竹内 そういった人事の問題は、官民問わず共通ですね。フラッシュメモリの開発の初期に関わったエンジニアは比較的若手が多かったのですが、日本的組織慣行からすると、役職は年齢で決まってしまう。代わりに、失敗した事業部のそれなりの年齢の人が我々の上の立場になるという、欧米企業では考えられないようなことが起こりました。

宇佐美 なるほど。組織内部の事情で人事が決まるのはいかにも日本的ですよね。官庁絡みで最近危機感を感じているのは、主体性がなかったり保身が上手かったりする「ほどほどの人」ほど辞めないってことなんです。先程もお話しましたが、このまま優秀な人が辞めていってしまうと、そういう「ほどほどの人」が局長クラスになって、日本の将来を担う政策立案をすることになってしまいます。結構そこは不安に思っています。

竹内 似たような話は民間でもありました。私もフラッシュメモリの開発に携わっていましたが、フラッシュメモリの開発に携わったエンジニアは優秀な人ほど辞めていってしまうんですよ。ただ、私は会社の組織というのはそういうものだとも思います。

 要は考えようで、優秀な人が2人でできることを、効率は悪いけどほどほどの人が10人でそれなりのアウトプットを出している。それで回っているならばそれで良いだろうし、ダメだったら会社は潰れる、それでいいじゃないかと。

宇佐美 確かに、そういうところはあると思います。ただ、民間企業はあまりに効率が悪いと潰れることができますが、役所は日本政府がある限り存続しなければなりません。そう考えると、役所の効率が悪いと回り回って国民にとって不幸な結末がやってくることになってしまうので、やっぱり「本流」と呼ばれる優秀な人は役所に残ってほしいと思っています。