空の旅は、雲の上の景色や数時間で異国の地に降り立つワクワク感など、非日常を楽しむことができます。中でも特別な空間といえば、やはりファーストクラスではないでしょうか。たった一枚のカーテンで仕切られた空間ですが、他のクラスのお客様は立ち入ることはできません。ファーストクラスに乗る人だけが許される特別な空間が作られています。そしてその空間は、お客様同士のエグゼクティブな交流が行われる社交の場でもあるのです。今回はファーストクラスに乗る人の「社交力」についてです。(CCI代表取締役・元国際線チーフパーサー 山本洋子)
ファーストクラスの乗客同士の挨拶とは
航空機のファーストクラスは航空会社によって、また機種によって仕様が異なります。
バブル期の大量輸送時代は、「ジャンボ」の愛称で親しまれた2階建て大型機B747が主流でした。機体によって異なりますが、「ジャンボ」にはファーストクラスの座席が12席から33席設置され、2階部分にはバーラウンジを備え付けたベッドルーム仕様のゴージャスな飛行機もありました。
今ではB747も日本の空から完全に撤退し、主流は大型機から中小型機にシフトしています。小型機のファーストクラスの座席数は多くて8席、ファーストクラスを設けない路線も多くなっています。
バブル崩壊やリーマンショックなど世界的な経済危機が繰り返されるたびに、ビジネス渡航のお客様が激減し、それにともないファーストクラスの需要も大きく様変わりしてきました。
そんな時代背景の中でも、ファーストクラスにはいつも社交の場としての役割がありました。普段なら秘書を通してしか話のできない上場企業の経営者や業界の著名人は、お互いが顔見知りのことも多く、たとえ互いに面識がなかったとしても世間に名の通る人ばかりです。同じ飛行機に乗り合わせたご縁から、まずお互いに自己紹介を兼ねた挨拶を交わすシーンをよく目にします。
そのときの自己紹介は、ビジネスシーンによくある名刺交換とは少し趣が違います。