壊滅的に欠けていた「うまさ」
それでも「魅了される」プレー

 まず、人気のあるゲーム実況は次に挙げる要素のうち、いずれかを一つ以上備えている。それが、「うまい」「笑える」「企画が面白い」「心地よい」の4点である。
 
 狩野英孝氏の配信は特に「笑える」が抜きんでている。また、変にカリカリせず自分のペースでプレーする様子に「心地よさ」を覚える人もいるであろう。
 
「企画の面白さ」は、『Dead by Daylight』というゲームをプレーすると決めた時点で、ほぼクリアされていた。

 このゲームは、女優・本田翼氏が実況配信して界隈で一躍ブームになった。芸能人がゲーム実況をやるといったら、たいてい『Dead by Daylight』」と思われるくらい盛んにプレーされるようになった。ホラーテイストの鬼ごっこなのだが、ゲームを知らない人でもわかりやすく、また見た目が刺激的なので、ゲーム実況に非常に向いたタイトルであった。
 
 かくして狩野氏も『Dead by Daylight』の実況を始めたが、氏のプレーには「うまさ」が壊滅的に欠けていた。人によっては「(もどかしくて)イライラする」とコメントするほどである。その点はご本人も自覚していたようで、インタビュー記事(『狩野英孝、YouTubeの再生数伸びずに「心折れかけて…」 “下手だからやりたくなかった”ゲーム実況で開いた活路』)を読むと配信を手がける前「うまくない自分のプレーを見せても…」と葛藤があったようである。

 しかし結果的に、その下手さ加減が大人気を巻き起こすことになる。