私たちの生活には、いろいろなところで神様の存在を感じられることがあります。身近なところでは、「初詣」。受験生なら「合格祈願」。ビジネスパーソンなら「商売繁盛」。名だたる経営者も、日本の歴史をつくった戦国大名や歴代天皇も、神様を信仰し、力を借りて成功を収めてきました。漫画やゲームのキャラクター名でつかわれていることもあります。もしかしたら、ヒットの要因は、神様のご利益かもしれませんね。
日本には、八百万(やおよろず)の神様がいると言われています。膨大な神様の中から100項目にわたって紹介する新刊『最強の神様100』には、古代から現代まで、めちゃくちゃ力のある神様が登場します。最強クラスの神様なので、ご利益も多種多様。
今回紹介する神様は、芸能人のような人気商売の方や経営者・事業者の方々も、熱心に信仰されている女神様です。ただし、信仰するにも注意が必要な神様なのです。

人間の二大欲求「性と金」に対応する女神とは?<br />Photo: Adobe Stock

芸能人御用達の性と金運の女神

人間の二大欲求「性と金」に対応する女神とは?<br />トヨカワダキニシンテン
イラスト/朝倉千夏

 芸能人にも経営者にも、強力な現世利益があると大人気なのが、トヨカワダキニシンテン(豊川咤枳尼眞天)です。豊川稲荷の神で、愛知県豊川市にある他、東京都港区の元赤坂にあります。元赤坂の豊川稲荷東京別院は、芸能人御用達のお寺で、ジャニーズ事務所の人たち、山口百恵さん、マツコデラックスさん、上田晋也さんら有名芸能人が多数参拝し、お相撲さんにも人気です。

 赤坂の豊川稲荷は元々、テレビドラマ「大岡越前」の主人公・江戸南町奉行の大岡忠相(ただすけ)が、トヨカワダキニシンテンを自身の屋敷内に祭ったものです。大岡忠相は、江戸時代でただひとり町奉行から大名になるなど、江戸時代で最も開運出世したサラリーマン武士です。豊川市の豊川稲荷信仰はお伊勢参りに次ぐ人気でしたが、江戸の人間にはやはり遠く、江戸にも参拝場所が欲しいと熱望されて、一般人も参拝できるようになりました。もちろん異例の出世をした大岡忠相にあやかりたい気持ちもあったようですね。ちなみに豊川市の豊川稲荷は、神社と誤解する方も多いですが、曹洞宗の寺院「妙厳寺(みょうごんじ)」です。

 お稲荷さんといいつつ、稲の神ウカノミタマとは異なる神で、白狐に乗る女性として描かれます。空海の真言密教が稲荷信仰と結びついた影響で、インド密教のダーキニーと結びついたのです。ダーキニーは、性的欲望を神聖な力「シャクティ」としたタントラ仏教の女神で、性愛の神とされます。端的にいえばセックスを改善する神様ですね。トヨカワダキニシンテンは祭るのが非常に難しいとされ、一度祭ると自分の命と引きかえに最後までその信仰を持たなければならず、もしその約束を破ると、途端に没落し、災いがもたらされると考えられました。

 おっかないことも言われるので、芸能人のような人気商売の方や経営者・事業者の方々も、熱心に信仰されているようです。人間の二大欲求「性と金」に対応する、ものすごくわかりやすい女神ですが、安易に手を出すと痛い目を見るわけですね。

【主なご利益】商売繁盛、技芸上達、金運向上

【こんな人にオススメ!】
性と金に紐づく人気商売に関係ある人

*本原稿は、八木龍平著『最強の神様100』からの抜粋し、再編集したものです。