他人とうまくコミュニケーションできないことからくる孤独感や閉塞感、自己肯定感の欠如、SNSによる誹謗中傷やバッシングなど、私たちは、いま多くの生きづらさを感じさせる事柄に取り囲まれています。そんな中にあって、毎日を心安らかに、できるだけ快適に生きていくためには、どうすればいいのでしょうか? 発達障害(ADHD)、うつ病など、生きづらさを抱えながらも精神科医として活躍するバク先生は、ツイッターでのつぶやきが共感・絶賛され、今、人気急上昇中。そんなバク先生の初の著書『発達障害、うつサバイバーのバク@精神科医が明かす生きづらいがラクになる ゆるメンタル練習帳』(ダイヤモンド社)が発売されました。同書の中には、生きづらさを解消するための実践的なヒントが詰め込まれています。本連載では、同書の発刊を記念してそのエッセンスをお届けします。心がスーッと軽くなる珠玉のアドバイスにお付き合いください。好評のバックナンバーはこちらからどうぞ。
自分の本質をしっかりと認識することがスタート
「自分を根本から変えたい!」と思いつつ、「いつになったら本格的な話をするんだ!?」とモヤモヤしながらここまで本連載を読んでくださっている方に、ここで残念なお知らせをしなければなりません。
人間の本性は、どんなに頑張っても、一生変わることはありません。
精神科医であり、発達障害持ちの私が言うのですから、これは間違いないことです。
ダメな性格や本性を変えるのが、精神科医の役割ではないかと考える方もいると思います。ここで大きなよくある勘違いを指摘しますが、医者はほとんどの病気を完治させることができません。
今「え!?」と思われたかもしれませんが、いわゆる「風邪」と言われる一時的な感染症(ものによっては後遺症が一生残ります)や、一部の病気にしか「完治」という単語は使えません。
比較的症状が落ち着いている場合は「寛解」(白血病、いくつかのがん、喘息など)が使われますが、これは治療を止めた後に症状が再発再燃する可能性を指した言葉です。
皆さんの身近な糖尿病や高血圧も、投薬している=悪化しないようにコントロールしている状態であり、食生活や生活習慣を劇的に変えない限り「完治」となることは大変少ないです。
ただ、「本性が変わらない=一生、生き方を変えることができない」という意味ではないということは理解してください。
性格がそのままでも、本性がネガティブ全開でも、現実的な問題に直面した際に、どのように受け取るか、行動をするかの方法をちょっと変えることで、生きづらさは十分改善され、快適な毎日を過ごせるようになるということは、今までの話でも十分にしてきました。
だからそのためにも、自分の本質(性格や考え方のクセ、トラブルが起こったときにどう動きがちか、物事に対してどんなふうにとらえがちか)をしっかりと認識することが最初のステップでした。
その次は、どこが原因でうまく生きていけないのかをしっかりと理解し、コントロールする術を学ぶこと=ラクになる生き方へ変えていくことが重要です。
これは発達障害やパーソナリティ障害に対してだけでなく、統合失調症やうつの患者さんに対しての治療でも、とても大切です。