税務調査で特に細かくチェックされるのが、「現金」の存在だ。不動産と違って移動が容易な現金は、脱税の手段に用いられることも多く、税務当局もその行方には目を光らせている。多額の現金をめぐるどういった動きが、税務署から怪しまれるのか。年間1000件の相続税申告・相談に携わる筆者が、実例をもとに解説する。(税理士・OAG税理士法人資産トータルサービス部部長 奥田周年)
現金が多いと
税務調査に入られやすい
相続税で税務調査に入られやすいケースには、決まったパターンがある。
それは、相続財産の中で「現金」や「金融資産」の割合が多い人だ。
だが現金は不動産と違い、どこにでも自由に持ち運ぶことができる。不動産は逃げられないが、現金は逃げられる――。税務署はこのように見ているのだろう。所有している財産で不動産が多い人と、現金や金融資産が多い人とでは、圧倒的に後者のほうが税務調査に入られる確率が高い。
私が相続税申告を担当する際にも、相続財産に現金や金融資産が多い顧客には「お客様は税務調査のある可能性が高いので、ご自身の財産ができた理由を思い出したほうがよいですよ」と、事前に伝えるようにしている。
また、相続財産の大小によっても税務調査に入られる確率が違う。
これまでの経験からいっても、相続財産が3億円以上ある場合には、5割以上のかなり高い確率で税務調査に入られると覚悟しておいたほうがいいだろう。
逆に、相続財産が1億円以下の場合であれば、税務調査に入られる可能性は今のところあまり高くないので、心配しなくてよいかもしれない。