「タワマン節税」もアウト?税務署が異例の判断を下した4つの理由写真はイメージです Photo:PIXTA

相続財産を圧縮するため不動産を購入することは、広く知られている節税手法である。しかし近年、相続財産に対する課税はより広く、より緻密なものとなりつつあり、不動産もその例外ではない。そんな課税強化の流れを象徴する出来事として、二つの「高額賃貸マンション否認事例」を取り上げたい。いわゆるタワマンなどの高額賃貸マンションの購入による相続税対策が税務署に認められなかった例である。なぜ認められなかったのか。詳しく見ていこう。(税理士・OAG税理士法人 資産トータルサービス部部長 奥田周年)

「高額賃貸マンション相続対策」を否認
“課税強化”を象徴したある判決

 2019年8月27日、東京地裁が出したある判決は、相続を扱うわれわれのような税理士あるいは金融関係者や不動産業者の間で話題になった。

 争点となったのは、被相続人が亡くなる直前に、金融機関からの借入により約13.8億円(合計)で取得した二つの高額賃貸マンション評価額。これを相続人は約3.3億円で算出したのだが、税務署は約12.7億円とすべきだと主張し、真っ向から対立した。その差額はなんと約9.4億円。なぜこのように大きな隔たりが生じたのだろうか?

 相続の際には、支払うべき相続税額を計算する上でも必要な「相続財産の評価額」を算出する。相続財産は現金だけでなく、株式や債券、貴金属、骨董品、そして不動産など多岐にわたる。それぞれについて国が「財産評価基本通達」で定めた基準を基に、算出することになっているのだ(詳しくは『【3分で分かる】相続対策の「三大鉄則」、税務署ににらまれる失敗パターンは?』を参照)。

 相続財産の評価額は、現金はそのままの金額、金・地金や有価証券は換金価格(時価)となるのに対し、不動産は「不動産評価額」が用いられる。この不動産評価額には、目的や算出方法によって「固定資産税評価額」「路線価」「基準値標準価格」「公示価格」「実勢価格(時価)」の5種類がある。「一物五価」という言葉を聞いたことがある人もいるだろう。このように不動産評価額は変動するため、なるべく小さな評価額に抑えることで、相続税の節税になるのだ。

 なお不動産は土地と建物とに分けられる。相続財産の評価は、土地は路線価(公示価格の80%)、建物は固定資産税評価額がそのまま適用される(固定資産税評価額は建築費の50~70%)。

 さて、冒頭の高額賃貸マンションのケースに話を戻そう。相続人は土地については路線価を、建物については固定資産税評価額を基に評価額を算出した。評価額の合計は約3.3億円で、相続税の基礎控除以下だったため、相続税はかからない計算だった。

 ところが、である。