どうしても昇進しろというなら、会社を辞めます

 次の日、A課長はB社長にCが自分の後任を断ったことを報告すると、B社長は信じられないといった表情をした。そして、「社員の希望をいちいち聞いていたら会社の人事が成り立たない。これは業務命令だ。」と言い、A課長に再度Cを説得するように言った。

 部屋に戻ったA課長は再びCを呼び、業務命令として総務課長になるように告げたが、それでも拒否された。A課長は不機嫌な顔で言った。

「どうしても君が命令を拒否するのなら、業務命令違反で懲戒処分になるぞ」
「懲戒処分、それってクビですか?」
「それも考えられる」
「じゃあ、クビになる前に自分から会社を辞めます」

 A課長は思わず「勝手にしろ!」と言い、部屋を出て行った。

 翌日、出社したA部長の机の上には「退職届」と書かれた1通の封書が置いてあった。あわてて中を確認すると、Cが書いたもので、今月末で会社を退職したい旨が書かれていた。A課長はその封書を持って社長室に走った。

 A課長はB社長にCの退職届を見せ、オロオロしながら言った。

「C君に今会社を辞められては困ります。彼は貴重な職場の戦力です」

 B社長は深いため息をついた。

「C君がそこまで昇進を固辞するなら仕方がない。私の当初案通りD君に総務課長をやってもらおう」

D主任にも昇進を断られる

 翌日、A課長はD主任に対して総務課長への昇進を打診したが、なんとこちらも断られた。理由は共働きの妻と一緒に2歳の双子の子どもの育児を分担していることと、同居している自分の父親の介護が必要なため残業ができないからだという。その返答にA課長はますます困ってしまった。もし自分の後釜が見つからなければ、せっかく閑職な上に権限を持つ総務部長のポストを得るチャンスを逃してしまうかもしれない。そう思うと居ても立ってもいられない気分だった。

 A課長が、Dからも課長昇進を断られたこととその理由を説明すると、B社長は嘆いた。

「昇進を立て続けに断られるなんて、こんなことは創業以来初めてだ。イマドキの社員は管理職になりたいと思わないのか?……しかし、このまま放置するわけにもいくまい。どうしたらいいか、E社労士に相談してみよう。E社労士に明日の夕方都合がつくかどうか聞いてみてくれ。面談には君も一緒に立ち会ってほしい」