コロナ禍で増える
医療関係の翻訳ニーズ

 コロナ禍は翻訳業界にも影響をもたらした。これまで地方自治体などのサイトでは、外国人向けの観光案内程度の英語しか掲載していなかったものが多かった。

 それがいまや、コロナの感染拡大防止や医療対応についての情報を英語・中国語・韓国語などの多言語で掲載するサイトが増えている。ワクチン接種の予約、医療機関への受診方法などを掲載しているため、外国人にとっては親切な対応であるように感じる。だが、翻訳された文章が「とても分かりにくい」という声が利用する外国人からよく上がっているのが実態だ。

 日本に住んでタイ語の翻訳をするPさんは、「日本の方は“多言語に対応したサイトはないよりあったほうがいい”と思われているかもしれませんが、全く意味が通じないものが多いです。さらに問題なのは、内容が分かりにくいものより、読んで誤解をするような誤訳に基づいた文章です。情報通りに動いても間違ったことをしてしまうのですから」と話す。

 特に医療情報は命に関わる危険性もある。正しい翻訳のもと、多言語に対応した表記にして情報を提示することは必須である。

 一方で、翻訳の現場には正しい翻訳が提供できない事情があるという。