検査院のHPにアップされた20年度決算検査報告によると、国が19~20年度に計上したコロナ関連の770事業を精査した。総額65兆4165億円のうち、執行率は65%の42兆5602億円にとどまったと指摘。残る21兆7796億円は繰り越され、使途がない1兆763億円は不用だったと結論付けた。

 コロナ禍の影響が見通せない中、見切りで多めに予算計上したことが主な理由のようだが、検査院は国に適切な予算執行と繰り越しや不用額が多額になった原因を国民に説明するよう求めた。

 個別の事業では、全世帯向けに配布した「アベノマスク」を巡り不良品の検品費用などに約21億4800万円が使われ、流通や配布方針の変更で8000万枚余が倉庫に保管され費用が約6億円に上ったと指摘した。

 雇用調整助成金と緊急雇用安定助成金の不正受給や過払いは約13億円、持続化給付金の不正受給は約5億9000万円が確認された。これはサンプル調査のため、氷山の一角でしかないとみられる。

 このほか接触確認アプリ(COCOA)の欠陥問題で、システムのテスト体制の管理が不適切として厚生労働省に改善を求めた。持続化給付金事業を巡っては、元請けから再委託と外注が繰り返され最大で9次請け(再委託費率99.8%)に及んでいた実態を問題視。経済産業省に検証を求めた。

「Go Toトラベル」では制度の不備を狙った不正が多発。不適切とされた利用額は計2114万円に上ったが、14万円しか返還されていないと指摘した。

捜査権や強制調査権はないが
官僚から恐れられる存在

 検査院は国や政府関係機関の決算、地方公共団体や独立行政法人などの会計をチェックし、決算検査報告を作成する役割を担う。よく国税庁のような財務省の一部局と勘違いされるが、国会(立法権)や裁判所(司法権)に属さず、内閣(行政権)からも完全に独立した唯一の行政機関でもある。

 トップの院長を含め検査官は3人で、合議制の最高意思決定機関は「検査官会議」と呼ばれる。構成に決まりはないが、生え抜きと他省庁からの出向、大学教授というのが一般的のようだ。