首都圏で物件を購入した場合
貯金は何歳までもつのか?

 次に、a案を採用した場合の年間収入を試算します。相談文には「賃貸収入で年間250万円程度」と記載がありますが、少し厳しく試算して200万円とします。また、「労働は必要に応じて」と記載がありますので、ご夫婦共に月5万円、年間60万円稼ぐと仮定しましょう。すると、2人分で120万円になります。この金額に株式の配当金42万円、賃料収入200万円を加えると362万円です。

 年間収入362万円、年間支出が770万円ですから、年間の赤字額は408万円になります。

 もし、3年後の50歳でセミリタイアし、65歳まで408万円の赤字が続くとすれば、408万円×18年で7344万円が金融資産から取り崩されます。住宅購入後の金融資産額は1億1929万円あるため、18年間の赤字額7344万円が取り崩されると65歳時点では4585万円が残ることになります。ただ、国民年金の保険料負担は60歳で終了します。そのため、いま7344万円の取崩額に含まれている60〜65歳までの保険料は不要です。ご夫婦の年間負担約39万円の5年分である195万円が金融資産に加わると考えます。65歳時点の金融資産額は4585万円+195万円=4780万円になります。

 65歳以降は公的年金を受け取ることができますが、セミリタイア後の約10年間はご夫婦共に収入が国民年金だけになることから世帯の受給額は月20万円前後、年間240万円とします。公的年金が得られるため65歳以降は働かないとします。

 期待している賃料収入が70歳まで得られれば、65歳以降の収入は公的年金240万円、賃料収入200万円の440万円です。配当金は株式を順次現金化していると考え、65歳以降の収入には加えないことにします。

 支出は変わらず770万円とすれば、年間の収支は収入440万円なので、赤字額は330万円、70歳までの5年間では1650万円です。65歳時点の金融資産額は4780万円ですから、1650万円が取り崩されると70歳時点の金融資産額は3130万円になります。

 70歳以降は、月24万円の住宅ローンの返済が終了していることから、毎月の生活費は50万円から26万円に減額となります。国民健康保険料も安くなり、また国民年金保険料の負担はなくなることから、その他費用は浪費分の100万円だけになります。

 70歳にもなると毎月の生活費も減少していると思いますが、減少分は健康保険料と相殺されると仮定しましょう。すると、70歳以降の年間支出は生活費26万円×12カ月=312万円、その他費用100万円と合計すると412万円になります。

 収入は賃料収入が無くなっているとして公的年金だけの240万円、支出は412万円ですから年間の赤字額は172万円です。70歳時点の金融資産額は3130万円ですから、3130万円÷年間赤字額172万円=約18.19年。この試算では88歳弱まで金融資産額がもつことになりますが、人生100年時代といわれる現在ではやや心もとないといえるでしょう。

 しかしながら、必要に応じて働くと記載があり、これまでの資産形成履歴を考慮すれば、上手くやりくりはずです。過度な心配は要らないと思います。

 ただ、ドングリさんが考えている賃料収入が少ないとはいえ、それが70歳まである前提で行っているため、実際はかなり甘めの試算になっていると言わざるを得ません。賃料収入はどうなるかわかりませんが、6000万円もの高額の住宅ローンを組み、半分を賃貸に出すというa案は非現実的だと思います。