人は寒さに弱い
どうしたら長生きできるか
人は冬に亡くなる確率が高い。「冷えは万病のもと」と言われるように、人間は寒さに弱いからだ。日本全国で冬(12~2月)の死亡率は他の季節よりも18%も高い(人口動態統計による)。逆に、冬対策がしっかりできていれば、死亡する確率を下げることができる。計算すると、死亡率を他の季節並みにできたら、人は6歳延命することになる。死亡率を下げるためには、どんな対策をしたらいいのだろうか。
冬の死亡率の増加は、特定の死因に偏って起こる。最も多いのは45.8%も増える「不慮の溺死及び溺水」で、お風呂場で起きている。これは主に「ヒートショック」によるもので、詳しくは後述する。
次に多いのは、「急性心筋梗塞」32.1%、「心不全」29.9%、「脳内出血」29.1%で、循環器系と言われる症状が並ぶ。つまり、血圧の変動によって発症しやすくなるものだ。これ以外に、「糖尿病」29.8%、「肺炎」28.9%も高い。これらの持病がある人にとって、冬は要注意なのだ。
「不慮の溺死及び溺水」の代表的なものにヒートショックがあり、自宅で発症することが多い。銭湯で罹患するという話を不思議と聞かないのには理由がある。厚生労働省の調べで、ヒートショックによる死亡者数は年間1.9万人に及ぶと推計されており、交通事故死の2610人(2022年)の7倍以上にものぼる。
これは同年の死亡者数の約1.5%に相当し、冬場の風呂場で高齢者が発症し、帰らぬ人になることが多い。発症のメカニズムは、他の部屋よりかなり寒い風呂場で裸になり、熱いお風呂に入ることで、血圧が急変し、脳卒中や心筋梗塞などを引き起こすことだ。
予防法としては、脱衣所やお風呂場と他の部屋との気温差を小さく保つことだ。銭湯の脱衣所は寒いとは言えない。このヒートショックをなくすだけでも、高齢者は寿命を3年ほど延ばすことができる計算になる。
冬の死亡率は都道府県でかなり違う。それは日本の気候が多様だからだ。47都道府県で「死亡増加率」をランキングしてみた。ワースト3は岡山県・山梨県・香川県となる。地域としては意外かもしれないが、これについても後で考察しよう。