お金を「貯める」ことではなく「使い切る」ことに焦点を当てた、これまでにないお金の教科書が、注目を集めている。『DIE WITH ZERO ~人生が豊かになりすぎる究極のルール』という翻訳書だ。昨年の発売からじわじわと口コミで話題となり、続々と重版が決まっている。現地では経済学者、起業家、ニューヨークタイムズ紙など多方面から絶賛を受け、日本でも著名な起業家、書評家、投資家、マネー系YouTuberなどから「滅多にない超良書」「これぞ理想の生き方」と絶賛の声が相次いでる。人生を最大化するために、金と時間をどう使うべきか? タイトルにある「ゼロで死ね」の真意とは? さまざまな気づきを与えてくれる本書から、その一部を抜粋して紹介する。
子どもに財産を与えたいなら、
死ぬ「前」にすべき
死ぬまで子どもに財産を分け与えないことは、偶然に身を任せるということだ。私はこれを「3R」と呼んでいる。どれくらいの「額」を、「誰」に(自分が死ぬときにどの相続人がまだ生きているかはわからない)、「いつ」相続するか、ランダム(Random)に決まることになるからだ。
果たして、偶然に任せて財産を与えることが子どもへの愛情と呼べるのだろうか?
そうではないはずだ。せっかく何年も働いて貯めた金を、誰に、いつ、どれくらい与えればもっとも効果的なのかを、もっと真剣に考えるべきだ。
事実、偶然に任せると、子どもたちは相続した金を最大限に活用できるタイミングを逃しやすい。
「もっと早く欲しかった……」
49歳で約1500万円を相続した女性の本音
たとえばこれは、十分な財産がある母親がいながら、厳しい経済状況に苦しんだ女性の記事の概略である。
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バージニア・コリンは離婚後、何年間も金に苦労した。元夫がろくに養育費を入れなかったため、貧困の一歩手前で4人の子どもを自力で育てなければならなかったからだ。後に再婚し、好条件のパートタイムの職についたとき、ようやく家計は安定した。
49歳のとき、当時76歳だった母親が亡くなり、かなりの額の遺産を相続した。バージニアを含む5人兄弟は、それぞれ13万ドルを受け取った。「5人分を合計した65万ドルは、相続税をかけずに相続できる上限額だったと思う」とバージニアは言う。おそらく、両親には子どもたちに遺したよりも多くの財産があったと考えられる。
「もちろん、大金を得たことはとてもうれしい。でも、もっと若い頃にもらえていたら、ずっと価値があったはずよ」とバージニアは言う。「その時点で、私はもう貧困の瀬戸際にはいなかった。裕福ではないにせよ、中流階級の快適な暮らしを楽しめるようになっていたから」と。
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死ぬまで与えない。それでいいのか?
バージニアが手にした13万ドルは、もし10年前か20年前に手にしていたら彼女と4人の子どもたちの命をつなぐ金になっていたはずだ。だが、タイミングを逃したために、思いがけず転がり込んできたボーナスのようなものにしかならなかった。何と残念な話だろう。
彼女の両親には金がたくさんあった。しかし、世間の大勢の人たちと同じく、死ぬまでそれを子どもたちに分け与えようとしなかった。娘が、必死になって家族を養っていたのに、だ。
(本原稿は、ビル・パーキンス著、児島修訳『DIE WITH ZERO 人生が豊かになりすぎる究極のルール』からの抜粋です)
1969年、アメリカテキサス州ヒューストン生まれ。アメリカ領ヴァージン諸島を拠点とするコンサルティング会社BrisaMaxホールディングスCEO。アイオワ大学を卒業後、ウォールストリートで働いたのち、エネルギー分野のトレーダーとして成功を収める。現在は、1億2000万ドル超の資産を抱えるヘッジファンドのマネージャーでありながら、ハリウッド映画プロデューサー、ポーカープレーヤーなど、さまざまな分野に活躍の場を広げている。