お金を「貯める」ことではなく「使い切る」ことに焦点を当てた、これまでにないお金の教科書が、注目を集めている。『DIE WITH ZERO ~人生が豊かになりすぎる究極のルール』という翻訳書だ。昨年9月の発売から口コミで話題となり、続々と重版が決まっている。現地では経済学者、起業家、ニューヨークタイムズ紙など多方面から絶賛を受け、日本でも著名な起業家、書評家、投資家、マネー系YouTuberなどから「滅多にない超良書」「これぞ理想の生き方」と絶賛の声が相次いでる。人生を最大化するために、金と時間をどう使うべきか? タイトルにある「ゼロで死ね」の真意とは? さまざまな気づきを与えてくれる本書から、その一部を抜粋して紹介する。
「年収600万円、45歳」の女性、エリザベスのケース
使わない金を稼ぐために、どれだけ人生の時間が無駄になるかについて考えてみよう。
ここでは架空の45歳の独身女性、エリザベスを例にする。彼女はテキサス州オースティンの会社で事務職として働き、年収は6万ドル(約600万円)。これは、アメリカ人の45歳の平均年収を上回る額だ。
所得税や社会保険料などを差し引いた可処分所得は4万8911ドル。勤勉で、週平均50時間働く彼女の正味の時給は19.56ドルだ。これが、エリザベスがオフィスで1時間過ごすことで得られる額になる。
質素なライフスタイルのおかげで、大学を卒業して数年後には学生ローンを完済している。30代前半に購入したマイホームの住宅ローンも完済した。この家は、売れば45万ドルになる。
昨年は例年並みの3万2911ドルを使った(1万6000ドルを貯蓄できた)。20年後の引退を望んでいるため、給料のかなりの部分を401kプラン(確定拠出型年金)と銀行に預けている。401kプランには税引き前の金を積み立てられるので、通常の普通預金口座に預けるよりも得だ。
エリザベスは大企業に勤めていて、会社からも信頼されている。だから雇用は安定しているし、退職まで毎年わずかな昇給も期待できる。ただし、ここでは話をシンプルにするために、退職まで給料の額は変わらないことにする。また、家のローンを完済したことを除けば、45歳まで老後資金は貯めていなかったことにする。
この条件で計算すると、エリザベスは65歳で定年退職した場合、32万ドル(45歳から65歳までの20年間、毎年1万6000ドル)を貯められることになる。持ち家の資産価値(変わらないものと仮定する)である45万ドルを足すと、65歳の退職時の資産は77万ドルだ。