お金を「貯める」ことではなく「使い切る」ことに焦点を当てた、これまでにないお金の教科書が、注目を集めている。『DIE WITH ZERO ~人生が豊かになりすぎる究極のルール』という翻訳書だ。昨年の発売からじわじわと口コミで話題となり、続々と重版が決まっている。現地では経済学者、起業家、ニューヨークタイムズ紙など多方面から絶賛を受け、日本でも著名な起業家、書評家、投資家、マネー系YouTuberなどから「滅多にない超良書」「これぞ理想の生き方」と絶賛の声が相次いでる。人生を最大化するために、金と時間をどう使うべきか? タイトルにある「ゼロで死ね」の真意とは? さまざまな気づきを与えてくれる本書から、その一部を抜粋して紹介する。
「ゼロで死ぬ」は効率の極み
生きているうちに金を使い切ること、つまり「ゼロで死ぬ」を目指してほしい。そうしないと、人生の限りある時間とエネルギーを無駄にしてしまう。エンジニア出身であるせいか、とにかく私は効率が好きで、無駄が嫌いだ。そして、人生のエネルギーを無駄にすることほど、もったいないことはないと考えている。だから私にとって、「ゼロで死ぬ」というのは完全に理にかなっている。
もちろん、死ぬ前にゼロに到達すべきではない。死ぬ直前にひもじい思いをしたい人などいない。だが、せっかく貴重な時間と労力を費やして稼いだ金を、生きているうちにできる限り使い切ってほしいと思うのだ。
こうした考えを世に訴えているのは、私だけではない。古くは1950年代、ノーベル賞を受賞した経済学者のフランコ・モディリアーニが、ライフサイクル仮説(LCH)というものを提唱した。
これは、生涯にわたって金を最大限に活用するための消費と貯蓄の方法を示すものだ。モディリアーニの基本的な主張は、生涯を通じて金を最大限に活用するには、「死ぬときに残高がちょうどゼロになるように消費行動をすべき」というものだ。仮に、もしいつ死ぬかがわかっているのなら、そのときまでに金を使い切れば、最大限の喜び(と効率)が得られることになる。
なんとなく貯めこむ人生は、もったいなさすぎる
「いつ死ぬかなんてわからない」という現実的な疑問に対して、モディリアーニはとてもシンプルな答えを示している。「安全に、かつ不要な金を残さないためには、人が生きられる最長の年齢を想定すればいい」と。つまり、自分が可能な限り長寿をまっとうすることを前提に、1年当たりの消費額を決定するのだ。
多くの人はそれすら計算していない。なんとなく必要以上の金を貯め込んでいるか、必要なだけ貯めていないかのどちらかだ。それでは、人生を最適化することはできない。
(本原稿は、ビル・パーキンス著、児島修訳『DIE WITH ZERO 人生が豊かになりすぎる究極のルール』からの抜粋です)
1969年、アメリカテキサス州ヒューストン生まれ。アメリカ領ヴァージン諸島を拠点とするコンサルティング会社BrisaMaxホールディングスCEO。アイオワ大学を卒業後、ウォールストリートで働いたのち、エネルギー分野のトレーダーとして成功を収める。現在は、1億2000万ドル超の資産を抱えるヘッジファンドのマネージャーでありながら、ハリウッド映画プロデューサー、ポーカープレーヤーなど、さまざまな分野に活躍の場を広げている。