繰り上げの受給する場合に
注意すべき4つのデメリット

 繰り下げとは逆に、65歳よりも以前に繰り上げで受け取ることもできる。世の中には「年金なんていつ破綻するかわからないのだから、もらえるものは早くもらっておいた方が良い」という人はいる。もちろん何歳から受け取るかは自由なので、その人のライフプランに合わせて早く受給開始することは、必ずしも悪いことではない。ただ、繰り上げで受給するといろいろとデメリットがあることは知っておくべきだ。

年金の受け取り方で絶対に注意すべきこと、変更不可の受給申請で大損も!筆者・大江英樹氏の近著「知らないと損する 年金の真実」(ワニブックスPLUS新書)

(1)減額された支給額が生涯続く
多分これが最大のデメリットだろう。年金は1カ月繰り上げるごとに0.5%(2022年4月からは0.4%)減額となるため、もし最長5年早めて60歳から受給開始すると30%(同24%)減額になる。そしてこの減額された支給額は生涯続くので、長生きすればするほど、65歳から通常に受給した人との差はどんどん開いていく。

(2)障害年金が受給できなくなる
これも結構大きなデメリットだろう。病気やケガなどで障害の状態になって、生活や仕事に制限が出た場合、給付要件を満たせば障害基礎年金が受給できるが、年金を繰り上げて受け取っていると、障害基礎年金は請求できない。障害基礎年金は受給額が手厚いし、高齢になるとケガや病気になる確率が高まるので、注意が必要だ。また、寡婦年金も支給されなくなる。

(3) 国民年金の任意加入ができなくなる
以前は学生が強制加入でなかった時代があったため、60歳になっても国民年金の保険料を納めた期間が40年(480カ月)に満たずに老齢基礎年金の額が満額になっていない人がいる。これらの人は60歳以降に任意加入することで年金受給額を増やすことができるが、繰り上げ受給を開始すると「年金受給者」の立場になるため任意加入ができなくなる。

(4)老齢基礎年金と遺族年金のどちらかを選択
老齢厚生年金を受け取っていた夫が亡くなったときに、妻は遺族厚生年金を受け取ることができる。ところが、妻が自分の老齢基礎年金を繰り上げして受け取り始めた後に夫が亡くなると、60代前半は自分の年金と遺族厚生年金は併給できず、どちらかを選ぶことになる。通常は額が大きい遺族厚生年金を選ぶので、繰り上げたはずの自分の年金はもらえなくなる。65歳からは両方受け取ることができるが、基礎年金の方は繰り上げで減額された金額がその後もずっと適用されることになる。

 繰り下げにしても繰り上げにしても、いったん受給を開始するとその後に変更はできない。これらの注意点やデメリットはよく考えた上で判断するようにしたいものである。

(経済コラムニスト 大江英樹)