「孤独」は人生を豊かにする相棒

現代は、孤独の力を見失いがちな時代です。

あまりにも情報が多く、顔が見えない他者の声が無数に聞こえては流れていき、内なる自らの声がかき消されてしまいます。

昨日の自分と今日の自分、その違いに、どれだけの人が気づいていることでしょう。

周りに翻弄され、「青がいい」と言われれば青く染まり、「白くなれ」と言われれば色を抜く。

いつしか消耗し、虚しさを持て余して、恨みを垂れる。

そんな繰り返しで命を使うことは、もうやめようと僕は言いたい。

もっと純粋な気持ちで、ありのままの自分で生きようと。

僕はたまたま、生まれ育った環境や、持って生まれた性格のせいか、常に「孤独」と共に生きてきました。

人とは少し違う人生を歩み、七十七歳という節目を迎えた今、孤独は決してマイナスではなく、人生を豊かにする相棒のようなものだと強く感じています。

逆説的に聞こえるかもしれませんが、孤独を味方にすれば、選択肢は広がり、共に事を成す仲間は増え、家族や友人をより愛せるようになるのです。

難しそうだと感じるでしょうか。

孤独の力は、特別な人間だけに与えられたものではありません。

誰もが備えているのに、心の奥にしまい込んでいるだけ。

現に、あなたは孤独に惹かれる自分に、すでに気がついてはいませんか。

もともと持っていたその力をゆっくりと掘り起こし、磨いてみてはいかがでしょう。

(本原稿は、中野善壽著 『孤独からはじめよう』から一部抜粋・改変したものです)