会社を伸ばす社長、ダメにする社長、そのわずかな違いとは何か? 中小企業の経営者から厚い信頼を集める人気コンサルタント小宮一慶氏の最新刊[増補改訂版]経営書の教科書』(ダイヤモンド社)は、その30年の経験から「成功する経営者・リーダーになるための考え方と行動」についてまとめた経営論の集大成となる本です。本連載では同書から抜粋して、経営者としての実力を高めるための「正しい努力」や「正しい信念」とは何かについて、お伝えしていきます。

商品・サービスのQPS(クオリティ・プライス・サービス)を考えるとは?Photo: Adobe Stock

お客さまは「商品やサービス」を買っている

 まず、説明しておかなければならないのは、お客さまは商品やサービスを買うという、とても当たり前のことです。

 講演などで「お客さまは何を買いますか?」と質問をすると、「満足」と答える人がいます。その際に私は、少し意地が悪いですが、「おたくの会社は、『満足』という饅頭でも売っているのですか?」と再度質問をします。

 けれど、実際には「満足」を直接買うお客さまはいません。会社に電話してきて、「満足をください」などと言うお客さまは誰もいないのです。

 では、何を買うのかというと、「商品やサービス」を買うのです。ここを間違ってはいけないのです。

 商品やサービスを通じて、「満足」や「感動」を得ようとしているのです。

 その商品やサービス、つまりQPSの組み合わせで他社との違いをいかに出せるかということが、マーケティングの根本というわけです。あくまでも、お客さまが求める「商品やサービス」にまで徹底的に落とし込まなければならないのです。

QPSの内容

 QPS(クオリティ、プライス、サービス)については、ここまで何度も出てきました。大切な概念なので簡単に復習したうえで、C(コスト)との関係を説明しておきましょう。

 Qはクオリティで商品そのものの内容です。私どものようなコンサルティングや機械のメンテナンスサービスのようにお金をいただいて提供するサービスはQとなります。

 Pは価格ですが、価格については後に詳しく説明します。

 Sは「サービス」ですが、お金を支払わないものすべての「その他」のSと考えたほうがよく当てはまります。

 実は、お金をいただかない「その他」の要素は沢山あります。

 誰でも経験のあることだと思いますが、例えば「店が近いから」「店員さんと知り合いだから」「社名を知っていたから」「電話の応対が良かったから」「会社の評判がいいから」「友達が持っていたから」といった理由でお客さまが購入されている場合、それはクオリティともプライスとも関係のない要素です。

 これを「サービス」と呼んでいるだけで、内実は「その他」の要素だと考えればいいと思います。

 このQPSの組み合わせで、お客さまは自社を選ぶかライバル他社を選ぶかを「相対的」に決めているわけです。

Sには、様々な要素がある

 もう少し詳しくS(サービス)の内容を見ておきましょう。

 Sはお客さまがお金を支払わないで、得られるものすべてを指しました。

 ここでは「立地」「評判」「アベイラビリティ(開店時間、品ぞろえ)」「人」「デリバリー」「クレジット」「店」について説明しましょう。

 まず、「立地」です。近いからその店で買う、ということです。特に日常品を買うときなどは、近くの店で買うでしょう。夕飯に使う野菜を買うために、わざわざ5駅離れたところには行かないことが多いです。よほど質の違う野菜などの食材があるなら別かもしれませんが、そういう場合は基本的に皆、近場で済ませます。またコンビニエンスストアなどは、その近くにいるお客さまだけをターゲットにしています。

 それから「評判」も、その他の要素の一つです。評判の良い会社や店で買いたいし、評判の悪いところでは買いたくないと思います。

 また「アベイラビリティ(利用可能性)」もあります。例えば夜中に起きて、パンを食べたいと思ったとき、頭に思い浮かべるのはスーパーやパン屋さんではなく、コンビニエンスストアでしょう。コンビニなら開いているだろうと思うからです。言い換えれば、店が開いていて利用可能だという認識があるのです。

 次に「品ぞろえ」。アベイラビリティの一つですが、あそこへ行けば欲しい商品があるのではないかと思うから、お客さまはそこへ行きます。例えば、書店へ行くにしても、洋書が欲しければ丸善に行こうと思うし、専門書であればジュンク堂で手に入るのではないかと思うから、そこへ行くわけです。

「アベイラビリティ」はとても大切な考え方で、お客さまから見て、常に「アベイラビリティ」がある、つまり、開店時間や品ぞろえが十分と思ってもらっていることが大切なのです。

 そのためには、お客さまにそのことを「認知」してもらっていることが重要で、これは、後に説明する「マーケティングの5つのP」の「Promotion(広告・宣伝)」とも大いに関係します。

 さらに言うと、「」も重要な要素と言えます。「知っている人がいるからあの店に行く」というケースもあれば、逆に「あの店員さんが嫌いだから、この店では絶対に買わない」ということだってあります。

 特にサービス業の場合、人の好感度は大きく影響するもので、お客さまに一度悪い印象を持たれたら、その後は二度と買ってもらえないということも珍しくありません。

デリバリー」も品物によっては重要な要素です。商品を物理的に運んでくれるかどうかです。現在は高齢化が進んでいますから、65歳以上の人がお買い物をされると、その日の夕方までに荷物を家まで運ぶというサービスを始めているスーパーやコンビニが増えました。

 さらに65歳以下のお客さまでも、妊婦さんや小さなお子さんを連れているお母さんなどは、重い荷物を運びたくないというニーズがありますから、その場合は「3500円以上購入していただければタダで運びます」というようなサービスもあります。

 デリバリーに関連して言えば、「納期」の問題もあります。とくにB to Bのビジネスでは重要です。予定している期日までにでき上がるかどうか、ということです。

 B to Cでももちろん納期が大切なことは少なくありません。

 例えば、結婚式を1カ月後に控えているのに、ウエディングドレスを頼むと3カ月かかると言われたら、お客さまはその会社には頼めません。つまり、納期が確実に守られるかどうかもまた、重要な要素です。

 S(その他)の要素は、まだまだ沢山あります。

クレジット」もそうです。家電量販店などでよく行われていますが、「分割払いで、金利ゼロ」とか、「ボーナス一括払い」とか、その間はお客さまに与信を与えているわけで、そういったところも買うか買わないかをお客さまが判断する際の要素になります。

」の要素もあります。ブランド品を購入するときに、人によってはディスカウントショップで購入してもいいと思うかもしれませんが、逆に、やはり立派な店構えで店員とじっくり話し合いながら買いたいと望むお客さまも少なくありません。

 ショッピングを楽しむということです。ですから、店の作り方や雰囲気、接客も、ブランドのステイタスに合ったものにしないと、お客さまの要望に応えられない場合があるわけです。

 このように、お客さまが購入を決めるかどうかに影響を与える、色々な要素があります。

 QPS――クオリティ、プライス、サービスと分解しましたが、商品そのものだけではなく、価格だけでもなく、その他の要素だけでもなく、すべてを総合してお客さまは会社を選び、商品を購入しています。そして、そのQPSもそれぞれまた分解して考えていかなければならないのです。

(本稿は[増補改訂版]経営者の教科書 成功するリーダーになるための考え方と行動の一部を抜粋・編集したものです)

小宮一慶(こみや・かずよし)
株式会社小宮コンサルタンツ代表取締役会長CEO
10数社の非常勤取締役や監査役、顧問も務める。
1957年大阪府堺市生まれ。京都大学法学部を卒業し、東京銀行(現三菱UFJ銀行)に入行。在職中の84年から2年間、米ダートマス大学タック経営大学院に留学し、MBA取得。帰国後、同行で経営戦略情報システムやM&Aに携わったのち、91年、岡本アソシエイツ取締役に転じ、国際コンサルティングにあたる。その間の93年初夏には、カンボジアPKOに国際選挙監視員として参加。
94年5月からは日本福祉サービス(現セントケア・ホールディング)企画部長として在宅介護の問題に取り組む。96年に小宮コンサルタンツを設立し、現在に至る。2014年より、名古屋大学客員教授。
著書に『社長の教科書』『経営者の教科書』『社長の成功習慣』(以上、ダイヤモンド社)、『どんな時代もサバイバルする会社の「社長力」養成講座』『ビジネスマンのための「数字力」養成講座』『ビジネスマンのための「読書力」養成講座』(以上、ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『「1秒!」で財務諸表を読む方法』『図解キャッシュフロー経営』(以上、東洋経済新報社)、『図解「ROEって何?」という人のための経営指標の教科書』『図解「PERって何?」という人のための投資指標の教科書』(以上、PHP研究所)等がある。著書は160冊以上。累計発行部数約405万部。