――投資家向けコラム「ハード・オン・ザ・ストリート」
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「ビッグテック」に仲間入りしたエヌビディアが、その洗礼を受けている。
エヌビディアによる半導体設計大手アーム・ホールディングスの買収計画は、これまでもずっと不透明だった。無線とコンピューティングのエコシステムの多くを支える膨大な知的財産を単一の企業が支配する可能性は、常にライバル企業の反発を招いてきた。また、米半導体メーカーが、サクセスストーリーを達成した欧州発の主要ハイテク企業の一つを手中に収める構想は政治的リスクもはらみ、英規制当局から注視されていた。しかし、エヌビディアは本拠地でさえもアドバンテージを享受できなかった。連邦取引委員会(FTC)は2日、両社の合併について、「エヌビディアのライバル企業を不当に弱体化させる」可能性があるとして、その 阻止を求めて提訴 した。
エヌビディアは2日、「この買収が業界に利益をもたらし、競争を促すことを立証するために努力を続ける」と述べた。多くのアナリストは、この買収について2020年9月に最初に発表されたときでさえ、見通しに懐疑的だった。政府や業界から反発を受けることが、ほぼ必至だったためだ。したがって、市場は確実な成功をさほど織り込んでいなかった。エヌビディアの株価は、2日午後に行われたFTCの発表前に2%あまり上昇していたが、引けまでに下がることはなかった。
エヌビディア単体での業績見通しは非常にバラ色で、過去最大の買収がとん挫してもほとんど影響はないだろう。ゲーム機用のプロセッサーやデータセンター用の特殊な人工知能(AI)チップの旺盛な需要を受け、今回の買収計画を発表する前から好調だった。直近12カ月の売上高は、アームとの買収計画が発表された当時の約130億ドル(約1兆4700億円)から現在は240億ドル強と、わずか1年あまりで85%伸びている。
この勢いは続き、向こう12カ月で年間売上高が300億ドルを突破するとアナリストは予想している。大手ハイテク企業が仮想世界「メタバース」の構築に向けて取り組む中、エヌビディアは近い将来、大きな恩恵を受ける企業の一つとみなされている。同社の主要顧客であるメタ・プラットフォームズ(旧フェイスブック)は、来年の資本支出を66%引き上げ、340億ドルにする計画だ。アナリストの推計によると、同社のデータセンター売上高は、2022年1月期は55%増、23年1月期は33%増になる見通しだ。
皮肉にも、エヌビディアの成功が、今はまさに同社に不利に働いているようだ。FTCは訴状で、エヌビディアが「世界最大かつ最も価値の高いコンピューティング企業の一つ」だと指摘した。同社の時価総額は今年に入って2倍以上に膨らみ、現在8000億ドルを超え、S&P500種指数採用企業の中で7番目となった。他の巨大ハイテク企業に続く規模で、他の全ての非ハイテク企業を上回っている。議員らの考えは、ビッグテックのさらなる巨大化を阻止する方向でほぼ一致しているため、エヌビディアは今後、さらに厳しい目を向けられることを覚悟する必要がある。巨大ハイテク企業であるということは昨今、標的にされやすいということだ。



