産業面でドイツと中国の関係はどう変わるか

――ドイツ・シーメンス社(現在は情報通信や生産設備等の分野で製造、およびシステム・ソリューション事業を幅広く手がける企業)は19世紀の終わりから中国でビジネスを展開し、「青島ビール」のルーツはゲルマニアビール社がドイツ風ビールを生産したのがはじまりでした。現代ではフォルクスワーゲン社がそうであるように、ドイツ企業も中国に深く根を下ろしています。産業面における中国との関係も変化するでしょうか。

ドイツ新政権の「脱・親中路線」見通しで、欧州経済が迎える転換点フランクフルトでも中国の地方政府や開発区が拠点を設けている(著者撮影)

 新政権がもたらす変化は、自動車の開発と製造、そして技術交流の分野で、ドイツが中国とどのように協力していくかということにも影響を及ぼします。特に、技術交流の分野は非常に重要です。

 メルケル政権下では中国企業によるドイツの技術購入やM&Aが進みましたが、ドイツの一部の産業界は中国をご都合主義的な技術の略奪者とみなしています。ロボット産業はその好例です。2017年に家電メーカーの美的集団(Midea)はドイツのロボットメーカーであるKUKAを買収しましたが、中国政府が、知的財産権の侵害を伴いながら自国経済の発展のためにドイツの技術をどのように利用するのかについて、ドイツ国内や産業部門、政府内も警戒心を抱いています。

 過去を振り返れば、ドイツ企業も日本企業と同じような経験をしてきました。ドイツ企業は中国企業に技術移転を進め、中国企業もドイツ企業の株式を取得するなど、双方のビジネス交流が進展し、中国の政治や制度の違いとビジネスを切り離すことができると信じていました。しかし、地政学と中国経済の間には矛盾が生じ、習指導部は中国企業に有利になるような政策を採用、実際は予想よりも難しいことがわかりました。