「サンマの次はスルメイカが、中国のターゲットだ。しかも、こっちのほうが、タチが悪い」――。こう嘆くのは、自民党水産族のベテラン議員だ。サンマでは資源管理の国際的枠組みを通して、中国の乱獲に歯止めをかけようとしているが、スルメイカは現時点で同様の枠組みが存在しない。日本政府は違法漁業の取り締まり強化に向けて動くが、中国に外交面での「弱腰」を見透かされていて、抑止力は十分とは言い難い。(フリージャーナリスト 竹谷栄哉)
日本のスルメイカ漁獲量が
10年間で5分の1に激減!
農林水産省によると、日本のスルメイカの水揚げ量は2011年の約24万2000トンから20年には約4万7000トンと、5分の1にまで急減した。
地球温暖化による水温の変化など環境面の要因が考えられるが、日本では別の特殊事情がある。日本海にあるスルメイカの好漁場「大和堆(やまとたい)」において、周辺国との「スルメイカ争奪戦」が、漁獲量の増減に直結しているのだ。
大和堆は能登半島沖の日本海中央部に位置し、水深が浅く、暖流と寒流が交わるため、イカやカニなどが多く取れる。日本の経済的主権が及ぶ排他的経済水域(EEZ)内にあり、外国漁船は許可なく操業できない。
にもかかわらず、実態は外国漁船の違法操業が常態化している。しかも、水産族議員が「タチが悪い」と嘆くほどである。いったい、どういうことなのだろうか。