大切な人を亡くした後、残された家族には膨大な量の手続が待っています。しかし手続を放置すると、過料(金銭を徴収する制裁)が生じるケースもあり、要注意です。
また国税庁によれば、2019年7月~2020年6月において、税務調査を受けた家庭の85.3%が修正となり、1件当たりの平均追徴課税(申告ミス等により追加で課税される税金)は、なんと641万円でした。税務署は「不慣れだったため、計算を間違えてしまった」という人でも容赦しません。
本連載では「身近な人が亡くなった後の全手続」を、実務の流れ・必要書類・税務面での注意点など含め、あますところなく解説します。著者は、相続専門税理士の橘慶太氏。税理士法人の代表でもあり、相続の相談実績は5000人を超えます。この度『ぶっちゃけ相続「手続大全」 相続専門YouTuber税理士が「亡くなった後の全手続」をとことん詳しく教えます!』を出版し(12月8日発売)、葬儀、年金、保険、名義変更、不動産、遺言書、認知症対策と、あらゆる観点から、相続手続のカンドコロを伝えています(イラスト:伊藤ハムスター)
ペットは遺産を相続できる?
故人がペットを飼育していた場合、相続後に誰がそのペットのお世話をするのかを決める必要があります。他の財産と異なり、ペットには水もご飯も与え続け、トイレや散歩などのお世話も必要です。
故人が1人暮らしをしていた場合には、親族が引き取る必要がありますが、ペット飼育が禁止されているマンションに住んでいる場合や、ペットアレルギーにより引き取ることができない場合も往々にしてあります。
「ペットに遺産を相続させてあげることはできないか?」とご相談を受けることがあります。残念ながら、法律上、ペットは「物」と扱われてしまうため、遺産を相続させることはできません。
しかし、私も妻が父から相続した犬(ミニチュアダックス)と一緒に暮らしていますので、「ペットは家族」という気持ちはとてもよくわかります。
負担付遺贈とは?
ペットに遺産を相続させることはできませんが、「ペットのお世話をし続けることを条件に、遺産を相続させる」と、条件つきの遺言書を作成し、相続人に世話を義務付けることは可能です。
このような拘束力を持たせる遺言を、「負担付遺贈」といいます。しかし、遺言書だけでは、この約束がきちんと守られる保証がありません。どうすればいいのでしょうか?