「今の会社で働き続けていいのかな?」「でも、転職するのは怖いな……」。働き方が大きく変わるなか、そんな悩みを抱える人は多いだろう。高卒から、30歳で年収1000万円超という驚きの経歴をもつ山下良輔さんは、そんな「転職迷子」たちから圧倒的な支持を得ている。山下さんは出版した初の著書『転職が僕らを助けてくれる――新卒で入れなかったあの会社に入社する方法』で、自らの転職経験を全て公開している。
その戦略は「外資系やコンサル業界は、学歴エリートでなくても入れる」「職歴に一貫性はなくてもいい」など、これまでの「転職の常識」を塗り替えるものばかりだ。どうしたら人生を変える転職ができるのか、どうしたらいい会社選びができるのか。この連載では本書より一部を特別に公開する。

頭がいい人と悪い人「転職先の選び方」で現れる差Photo: Adobe Stock

 外資系に比べ、日本の伝統的な大企業が大量採用を行うタイミングはかなり限定されます。

 なぜなら日本の大企業は、新卒一括採用で大量に人を採ることが可能だからです。特に大企業の場合はネームバリューのある大学の優秀な学生がたくさんやってきて、そのなかから選ぶことができる。しかも、新卒であれば中途採用で実力がある人を雇うよりもコストを抑えられます。

 したがって、売上の急激な拡大に伴って大量の人が必要となるような、中途採用を「せざるを得ない」タイミングでない限り、積極的な大量採用を行いません。

 これを見極められるかが、転職成功のカギとなります。

 僕が転職したスバルも、例外ではありませんでした。ではなぜ入社できたかというと、スバルの売上が急伸し、大量に中途採用を行っていたタイミング(波)に乗れたからです。

 僕が入社したのは2014年ですが、当時のスバルは2012年に約1.5兆円だった売上高が2014年に約2.4兆円、2017年には約3.3兆円に急増。特に、自動車の生産準備(自動車を工場で量産する前の準備業務)を担う部署の人員が足りていませんでした。僕が所属していた生産技術部は、毎月のように新しい人が入社して部署の人数は2~3割増くらいに拡大していました。

 ここではスバルの例を挙げましたが、「売上急拡大」で人手不足なのは日本の大企業に限りません。最近は、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション:デジタル技術を使って業務や経営を改革すること)などによりIT需要が急激に伸びています。

 僕が異業種からの転職でPwCに潜り込めたのは、同社が当時、DX推進に向けて積極的な大量採用を行っていたからです。しかも応募条件が厳しくなく、「未経験者歓迎」だったこともラッキーでした。実際、同社の新卒採用よりもかなり多い人数を中途採用していました。

 ベンチャー企業で売上が急拡大している場合はさらにチャンス。大企業の場合は「若い人は採用するが、管理職にはポジションがない」という場合もありますが、組織として成熟していない、つまり「上が詰まっていない」ベンチャー企業であればポジションもどんどん増えて、出世、昇給のチャンスも生まれます。

〈具体的な職種〉
・SIer(エスアイヤー)のエンジニア
 SIとは「System Integration」。SIerとは、コンピュータやネットワークを組み合わせてシステムをつくる「システム関連会社」全てを指します。クライアント企業のDX需要の高まりに対応するために人が必要になり、大量採用が増えています。

 仕事の内容は、クライアントの課題を、ITの力で解決すること。次に述べるSaaS(サース)企業のサービスを導入することもあります。ただし、完全未経験だとキツい職種であるのも事実。受かるためにも、入社してから実務を行ううえでも、ある程度スキルの積み上げは必要です。

・SaaS企業の営業
 SaaSとは、「Software as a Service」の略。ネット上で使う「サービス」を売ることです。

 人を大量に採用している理由は、サービスを導入する企業が増えて、営業の人員が必要だからです。

〈探し方〉
・求人が「あらゆる部署」から出ている
「とりあえず人が足りていないんだな」とあからさまにわかる状況です。受けたい企業が転職などで企業名で検索したときこの状況であればチャンスのタイミングだと思ったほうがいいです。当然ですが、売上の急拡大が永遠に続くことはないので、いつ採用が終わるかも未知数です。

・利益ではなく「売上の伸び率」を見る
「決算が好調だった」とニュースになっていたら、「売上規模」が大きくなっているかをチェックしてください。企業が大量採用を行うのは「売上」が拡大しているときです。仮に、少数精鋭で「利益率だけ」が上がっている場合、市場ではもちろん評価されますが、採用はない可能性が高いです。