東南アジア地域での
EVと半導体生産強化

 業種別に見ると、おもにEVと半導体の分野でわが国の工作機械需要が高まっている。特に、東南アジア地域ではEVと半導体という世界経済にとって重要性が高まる2つの分野で直接投資が増えている。一つの見方として、東南アジア各国では各国政府がEVや半導体という世界経済の先端分野の産業育成を急速に重視し、産業構造が激変し始めている。

 まず、EVシフトなど自動車の電動化によって自動車生産のありかたが激変している。EV生産ではすり合わせ技術が低下し、デジタル家電のようなユニット組み合わせに移行する。具体的には、産業用ロボットの活用を増やすことによる生産ラインの自動化領域が拡大されたり、生産ラインが短くされたりしている。

 そうした取り組みが顕著なのがインドネシアだ。「2060年に温室効果ガス排出を実質ゼロにする」とインドネシアのジョコ政権が表明し、EV関連の生産設備の増加、脱炭素に対応したインフラ整備を進めることによって経済成長を加速させる意向だ。また、ベトナムやタイ、マレーシアでもEV導入支援策が強化され、生産体制が強化される。

 また、マレーシアでは半導体関連の投資が増加している。最先端のロジック半導体製造を推進する台湾、メモリ半導体で世界トップシェアを持つ韓国に加え、夏場の感染再拡大によって車載半導体供給地としてマレーシアの重要性が一段とはっきりした。

 マレーシアでは車載半導体の生産能力を強化する米インテルが8000億円程度の設備投資を行う。独インフィニオンはマレーシアで電機関連企業を買収し、サプライチェーンの強靭化を進めている。独ボッシュやわが国のローム、富士電機もマレーシアでの生産能力を拡張している。以上より、現在の世界経済の先端分野においてわが国の工作機械メーカーは依然として競争力を発揮している。