日本に第3次オイルショックと、スタグフレーションの危機はやって来るのか?写真はイメージです Photo:PIXTA

日本を襲う値上げの秋
不況下の物価上昇「スタグフレーション」が来る?

「値上げの秋」です。原油高によるガソリン価格の高騰が再三ニュースになっているほか、小麦製品の値上げ、ジャガイモ価格の高騰によるポテトチップスの値上げ、マヨネーズやサラダオイルの値上げから魚介・果物まで、値上げのニュースは幅広い分野で家計を直撃しています。

「アベノミクスではデフレ脱却が重要だと言ってきたじゃないか?」と思うかもしれませんが、経済学的には良いインフレと悪いインフレがあります。

 不況下なのに物価上昇が起きる現象を、「スタグフレーション」といいます。これは経済にとっては悪いインフレです。コロナ禍で経済が停滞している(不況)のに、生活必需品の価格(物価)が上昇するという今の状況は、定義としてはスタグフレーションに該当します。

 アベノミクスが目指していたように、好景気でわたしたちの給料が上がってそれを製品価格に転嫁して起きる値上げならば、これは良いインフレです。それならばデフレ脱却で幸せな世界になるのですが、給料が上がらない、ないしはコロナ禍で収入が減っているときの値上げは、インパクトが逆です。物価だけが上昇してデフレを脱却しても、不幸な未来しかやってきません。

 1974年のオイルショック世代が体験した最悪の狂乱物価上昇と比べると、まだ直近のインフレはおだやかなレベルです。とはいえ、ここから先の物価上昇ペースはどうなるのでしょうか?

 昨年、コロナ禍が始まった直後に発刊した『日本経済予言の書』で私は、コロナ禍の回復期に世界をスタグフレーション危機が襲う危険性について警鐘を鳴らしています。この先の展開次第では、世界経済が最悪のシナリオに巻き込まれる可能性があるという意味です。そのようなシナリオが現実化するかどうか? この記事では考慮すべき要素について分析してみたいと思います。