20年以上にわたり、のべ6000件以上の家を片づけてきた「片づけのプロ」、seaさん。家事代行マッチングサービス「タスカジ」では「予約が取れない家政婦」と呼ばれ、この冬「セブンルール」にも出演するなど、人気が急上昇している。
そんなseaさんの片づけ術の集大成が、新刊『家じゅうの「めんどくさい」をなくす。ーーいちばんシンプルな「片づけ」のルール』。プロ歴20年以上のseaさんは、家が散らかる原因はすべて「めんどくさい」が放置された結果という結論に達した。その「めんどくさい」をなくせば、どんな家でも片づいて、しかもリバウンドしない。
seaさんの片づけを体験した人は「なぜか家族の仲がよくなった」と感じる人が多いという。著者インタビュー4回目では、片づけで家族にイライラしなくなる「3つの鉄則」を聞いた。(取材・構成/樺山美夏、撮影/疋田千里)
鉄則① 家族の誰かひとりが片づけ役にならないようにする
――私は毎日のように子どもから「ママ、○○はどこにある?」って聞かれるんです。ですから、『家じゅうの「めんどくさい」をなくす』を読んで家族のストレスを減らす片づけのアドバイスが一番参考になりました(笑)。
sea:家族が何でも聞いてくるのは、それだけ頼もしい存在だからですね。自分が探せば見つかりそうなものも、聞いた方が早いと思ってしまうんでしょう。前回の話でも、ゴミ箱がちゃんとあるべき場所にあるとおっしゃっていたので、やっぱり片づけ能力が高いんだと思いますよ。
このように、家族のうちの誰かひとりが「片づけの責任者」になり、家族みんなに頼られているケースは多いです。もし、いつまでも自分にばかり頼ってほしくないのであれば、家族個人に片づけの責任を渡していったほうがいいです。
「自分のことは自分でやってね」と親が子どもに教え込めるのは、10歳ぐらいまでと言われています。それまでにできるだけ自分のモノは自分で片づけるように、誘導していったほうがいいと思います。
――自分がやったほうが早いと思っちゃうので、家の片づけ担当が私になってしまってるんですね。下の子は年齢的にまだ間に合うので、自分で片づけるように今日から声をかけたいと思います。
sea:そうですね。場所を聞かれたときに、ただ言われた通りに出してあげるのではなくて、「いつもどういうところから出したか覚えてる?」など、お子さんを巻き込むコミュニケーションを少しずつ試してみるといいと思います。
お子さんを片づけに巻き込む絶好のチャンスは、子ども用のスペースが広がったり、個室を与えられたりしたときです。自分専用の場所ができると、子どもでも片づけのモチベーションが自然と上がります。
気を付けてほしいのは、子どもにとって「めんどくさい」仕組みがないようにすることです。実は、どこのご家庭でも、お子さんのためのスペースは、おとな都合で理不尽にめんどくさいしくみになっていることが多いんです。子どもにとって重すぎる引き出しや高すぎる棚などを使いこなすのは無理があります。子どもの目線の高さにしゃがむだけで、気付くことは多いはず。「片づけなさい!」と怒る前に、まずそこを修正してあげるといいでしょう。
――なるほど、ただ「ちゃんと片づけて」と言うだけでは、なかなかうまくいかないんですね。
sea:仕組みができたら、あとは「あなたに任せるね」と言って、基本的に全部やってもらうようにします。そうすると、子どもに「自分のスペースの片づけは自分の仕事なんだ」という自覚が芽生えはじめます。
親が「ちゃんと片づけてる?」と中途半端に口出ししていると、片づけの主体がどっちつかずになって本人のモチベーションも下がるので、責任は完全に本人に譲り渡すつもりで手離れしていったほうがいいですよ。
これは子どもに対する話に限らず、夫婦間で責任を譲り渡すときにも重要なポイントです。
鉄則② リビングに「居場所」と「通り道」を分ける
――リビングは家族共有スペースなので、気がついた人が片づけないとすぐごちゃつきます。この本に書いてあった、妻・夫・子どもがそれぞれ使う「居場所」と「通り道」を分けるテクニックは、どんなご家庭でもすぐ実践できそうですね。
sea:リビングは「くつろぐ」「遊ぶ」「家事をする」など、家族がそれぞれ違う目的で使う多目的スペースです。でも、ベランダに洗濯物を干すときの通り道にリビングでゴロゴロしている人がいたら邪魔ですし、食事の支度をしているときに子どもが広げたおもちゃを踏んだらイラっとするでしょう。
ですから、リビングの片づけは「家族のイライラのもと」を作らないことが最大のポイントです。くつろぐための「居場所」と、家事動線などの「通り道」がかぶるとお互いイラッとします。
そのため、下の図のように「居場所」と「通り道」を分けるように家具の配置を見直すことをおすすめします。ラグマットを敷くだけでもエリアを区切る効果はじゅうぶんにあります。
――床にラグを敷いただけで「区切り」効果があるんですか!
sea:たとえば、リビングの「くつろぎスペース」と「キッズスペース」にそれぞれラグを敷いてみましょう。2つのエリアがかぶることなくすみ分けられると、大人がくつろげて、子どもが思いっきり遊べるリビングになります。
子どものスペースは狭くても大丈夫。子どもは秘密基地が好きなので、狭くても「自分だけの場所」がはっきりしているほうが喜びます。
鉄則③ 「ごちゃつく場所」を目線から外す
sea:リビングはどうしてもモノが集まりやすいので、「ごちゃついている場所があっても気にならない状態にする」と発想を転換してみることも大事です。
――どういうことですか?
sea:リビングの中で、ゆっくりくつろぐ場所はダイニングテーブルやソファなど、ある程度決まっていますよね。ごちゃつきやすい場所も決まっていて、たいていキッズスペースと本棚回りを気にする方が多いです。
だから、くつろぐ場所に座ったときの視界の範囲から、ごちゃつく場所を外してしまえばその瞬間から気にならなくなります。大げさな模様替えは必要なく、角度を変えたり、数十センチずらすだけでも、視界から外すことはできるものです。
――ずらすだけでいいなんて驚きです! インテリア雑誌に載っているような、リビングにモノが一切ない見えない収納に憧れることもありますが、家族で生活していると難しいです(笑)。その点、この本のseaさんのアドバイスはとても現実的で参考になりました。
sea:見えない収納だと扉付きの棚とか箱にモノをしまうことになりますが、いちいち扉を開けたりフタを取ったりして出したり入れたりするのってめんどうです。結局、元に戻さずにその辺に置いちゃったりしている人もいますから。
そもそもモデルルームみたいに見た目が完璧な部屋は、片づいた状態を保つのに相当な努力が必要です。自分ひとりでキープするのは大変ですし、家族に厳しいルールを守ってもらうのも無理があります。
やはり「めんどくさい」をなくすことが、ストレスの少ない居心地のいい部屋づくりには必要だと思います。
【大好評連載】
第1回 6000軒を片づけた家政婦が教える「片づけられない人」の問題点
第2回 6000軒片づけて分かった「捨てられない人」でも必ず片づく方法
第3回 今すぐ「散らからない家」にできる裏ワザベスト3
大学卒業後に始めた家事代行サービスの仕事にどっぷりはまり、20年以上にわたって個人宅の片づけや掃除を行ってきた。
いままでに片づけた家は6000軒以上。家事代行マッチングサービス「タスカジ」では「seaさんが片づけてくれると、なぜか家族の仲までよくなる」と口コミで評判になり、「予約の取れない家政婦」と呼ばれるようになった。
メディア出演や執筆、片づけ講座の企画・開発など幅広く活動を行う。著書に『タスカジseaさんの「リセット5分」の収納術』(主婦と生活社)がある。新刊『家じゅうの「めんどくさい」をなくす。』を上梓した。