国土交通省の所管する建設工事受注動態統計調査に関して、データの書き換えや二重計上が発覚し、公的統計の信頼を揺るがす大きな問題となった。臨時国会の後半、連日のように取り上げられ、政府は説明と釈明に追われた。問題の本質はどこにあるのだろうか。(政策コンサルタント 室伏謙一)
建設工事受注「動態」統計調査は看板倒れ?
調査票の書き換えを国交省が指示
事が発覚したのは、会計検査院による検査においてである。当該検査は、2019年6月10日に参議院より、公的統計の整備に関する業務の実施体制や実施状況、予算の執行状況、公的統計に対する点検検証の取り組み状況などについて検査を行い、報告を行うよう要請があったことを受けて実施されたものである。その結果は、「会計検査院法第30条の3の規定に基づく報告書『公的統計の整備に関する会計検査の結果について』」として報告、9月に公表された。
会計検査院の検査は、この統計調査を狙い撃ちしたのではなく、あくまでも各府省が所管する統計調査の実施状況について調査したものであり、その中の不適切事例、「集計に含めるべきではない過去分の調査票の情報も集計していたもの」として把握された。具体的には、この統計調査では毎月の受注高をその月の翌月10日を期限として都道府県に提出することになっているが、11の都道府県において、それ以前の月の受注高を記載した調査票が一緒に提出された場合に、その月に合算して書き換えるように国交省が指示していたというのである。
これでは実態把握などできず、「動態」統計調査の看板倒れに等しい。しかも会計検査院からこうした指摘があったことを、この統計の所管部局は、国土交通相に報告していなかったようだ。毎月勤労統計調査であれだけ問題になり、そこからまだ日が浅いというのに、国交省担当部局はなんと緊張感のないことか。
国会での追及が始まったのは12月15日。朝日新聞による初めての本件に関する報道を受けてである。国会での追及を受けて、岸田首相は、斉藤国土交通相に対して、同日、次のような指示を行った。
「統計の学者のみならず元検事などを入れた第三者委員会を、国土交通相の下、立ち上げ、徹底的に検証し、1カ月以内にまとめ、統計委員会に報告し、他の統計の信頼回復に寄与させること」
まずは自ら身を律すべしということなのだろうが、第三者委員会を開催したとして、その事務局は国交省の担当部局なのだろうから、結局波風を立てないことに重きを置いた内容にならざるを得ず、その責任の所在も、背景事情も、うやむやとはいわないが、なんとも釈然としないまま幕引きということになっていきかねない。野党側にしても、今この段階では通常国会の予算委員会で集中審議などと息巻いているが、今後他の「話題」が出てくれば、本件の優先順位は低くなっていくことだろう。
統計書き換え問題の本質は
どこにあるのか
では、本件は本質的には何が問題なのだろうか?前回の毎月勤労統計調査問題のときも再三指摘してきた通り、筆者はわが国の統計制度の問題ではないかと考えている。