世間を騒がせてきた不正統計問題。野党による追及が体たらくだったこともあり、世間の関心も尻すぼみになってしまったが、着々と統計改革の議論は進んでおり、統計法の改正も含め、わが国の統計制度が大きく変わる可能性が出てきた。かつて総務省で政府の統計制度の所管部局にも在籍していた元官僚の筆者が解説する。(室伏政策研究室代表、政策コンサルタント 室伏謙一)
不正統計問題は
あまりに楽観視されている
年頭から世間を騒がせてきた不正統計問題――。
野党はこれを奇貨として一気に安倍政権を攻められる。それとも、関係閣僚の「首」が取れるとでも考えたのであろうか。「アベノミクス偽装」なる言葉まで作り出し、意気揚々と衆参の予算委員会を中心に追求を行ったものの、問題の本質を見間違え隘路(あいろ)にはまり、尻すぼみになってしまったのは、既にご承知のとおり。
「統計王子」なる異名を取った議員もいたが「王様」にはなれず、そうこうしているうちに世間の関心は薄れていってしまったようだ。
そんな世間の関心の動向とは関係なく、統計制度を所管する総務省の統計委員会に設けられた点検検証部会では、粛々と作業が行われてきている。
5月16日に開催された第4回会合においては、(1)基幹統計の一斉点検事案の影響度評価、(2)一般統計調査の点検結果及び、(3)第1次再発防止策素案が示された。
(1)と(2)については、その影響度に応じて、「I 数値の誤りも利用上の支障も生じない」「II 数値の誤りは生じていないが、利用上の支障を来す」、「III 利用上重大な影響は生じないと考えられる数値の誤り」「IV 利用上重大な影響が生じると考えられる数値の誤り」の4つに区分され、それぞれ事案の概要と対応方針や対応の状況が報告された。
個別の統計調査の不適切事案について逐一云々することはしないが、概して「影響がない」「利用上の支障は生じない」といったように、その影響について楽観視するものが多く見られた。