行政のDX(デジタルトランスフォーメーション)の肝は、ただ既存システムを新たに置き換えるのではなく、業務の見直しを伴うトランスフォーメーション(移行)を実現することにある。IT化で不要になる業務には天下り組織が関与していることも多々あり、DXの成功には霞が関の既得権益への切り込みが不可欠だ。特集『ITゼネコンの巣窟 デジタル庁』(全7回)の#6では、“居場所”消失の危機にある公務員らによるデジタル庁への抵抗を暴く。(ダイヤモンド編集部 千本木啓文、村井令二)
行政デジタル化の抵抗勢力
総務省、法務省、警察庁の見苦しい抵抗
「デジタル庁は政府の『IT投資の刷新』と『省庁の既得権益の排除』を両輪で進めないといけない。規制改革推進会議とのタッグをさらに強化する必要がある」。デジタル庁準備室の中堅幹部は、同庁の成否を分けるのは、天下りした元官僚らが守ってきた利権を打破できるかどうかだと喝破した。
例えば、行政がデジタル化されれば、運転免許の更新のたびに運転免許更新センターに足を運ぶ必要などなくなるはずである。だが、そうなると免許センターの窓口業務やそこで講義をする職員の仕事は大幅に減ってしまう。
そうした事情もあり、各省庁は、行政のデジタル化をうわべだけのものに押しとどめて、雇用の場や天下り先といった既得権益を死守してきた。
行政のデジタル化に反発する急先鋒となっているのが総務省や法務省、警察庁だ。省庁の抵抗勢力の動きを具体的に見ていこう。