20年以上にわたり、のべ6000件以上の家を片づけてきた「片づけのプロ」、seaさん。家事代行マッチングサービス「タスカジ」では「予約が取れない家政婦」と呼ばれている。「1回来てもらっただけで、その後もずっと片づいた状態がキープできる」と口コミで人気に火がつき、テレビ「セブンルール」にも出演するほどの話題の人だ。
そんなseaさんの片づけ術の集大成が、新刊『家じゅうの「めんどくさい」をなくす。ーーいちばんシンプルな「片づけ」のルール』。seaさんが20年かけて導き出した結論は、家が散らかる原因はすべて「めんどくさい」のせいだということ。そしてその「めんどくさい」をなくせば、どんな家でも片づいて、しかもリバウンドしないという。一体どういうことなのか? 本書より一部を特別に抜粋・編集して公開するこの連載。今回は、片づけられない人がおちいりがちな「SNSの罠」について紹介する。
誰かのまねは、結局しんどい
私の仕事は、依頼者さまの家に伺い、要望に沿った片づけをすることです。でも、依頼者さまに「どんなお部屋にしたいですか?」とは聞かないようにしています。そうすると「すっきりさせたい」「おしゃれにしたい」など、見た目のイメージの話になってしまうことが多いからです。
とくに最近はSNSなどで簡単に「お手本」を探せるようになりました。同じ書類ケースがずらりと並んでいたり、引き出しの中が細かく美しく仕切られていたりするおしゃれな写真を見ると、そっくりまねしたくなることもありますよね。
でも、「これが片づけの正解なんだ」と思ってそのまままねしてしまうのはちょっと待ってください。片づけのプロである私から見ると、SNSなどで紹介されている見た目重視の収納はほとんどが「めんどくさい」のです。余裕のない小さなケースはすぐにあふれるし、細かく仕切られた引き出しにモノをしまうのは意外とめんどくさいもの。片づけに集中しつづけられる環境でない限り、まずキープできません。
憧れを捨ててダサいのを受け入れてくださいということではありません。大事なのは優先順位です。まずは本書で説明しているように「めんどくさい」をなくし、しくみの問題を解決する。生活がラクに回り出せば、見た目はあとからついてきます。ケースの色をそろえたり、収納家具をアップグレードしたり、インテリアの満足度を上げるのはそれからです。
人生の主役を、自分に戻そう
あなたの人生は、あなたが主役。あなたによる、あなたのための家こそが、人生の舞台になるべきです。
でも、「写真で見たきれいな部屋」や「人から褒められる家」を目指しているうちは、あなたは人生の主役の座を失っています。自分の中に基準がなく、何となく誰かの感覚を借りているだけなので、いつまでたっても「うちはまだダメな気がする」「これで合っているかな?」と自信がないままです。
一方、「めんどくさい」という基準は、あなたの中にある感覚に基づくもの。だから「めんどくさいをなくす」ことを目指して片づけた家は、あなたによる、あなたのための家になります。誰かの基準に合わせるのではなく「自分がどう感じるか」を考えられるようになると、人生の主役が自分に戻ってくるのです。
片づけを始める前は「どうしましょう……?」と自信がなかった依頼者さまも、作業をすすめるうちにだんだんご自身が主役になってきて「これはこっちにしまってください」「あ、これは捨てます」と断言できるようになります。自分の中に基準がうまれると、迷いがなくなるんですね。
自分の軸で片づけ、「家を自分でコントロールできている」感覚が生まれると、その自信は人生全体にも広がっていきます。