0巻を知るファンには当然期待と不安があり、すでに超人気作品となっている『呪術廻戦』の前日譚ということで、0巻を知らない人からの注目も高かった。だから『劇場版 呪術廻戦 0』は、よほどうまくやらなければファンからたたかれること必至であり、しかしうまくやれば高い評価を得られるであろうことが、公開前に予想できた。
 
 そして『劇場版 呪術廻戦 0』は公開され、原作と同様の神作品となったのであった。

飽きさせないストーリー展開
迫力ある戦闘シーンも見どころ

 まず、これは最近のマンガ原作アニメに共通して言えることだが、動きのあるシーン(バトルものなら戦闘、スポーツものなら試合など)に迫力があった。原作の芥見下々氏もド迫力の筆致で戦闘を描写するが、マンガとアニメでは媒体が違うので見せどころも違う。視覚と聴覚を存分に刺激する息もつかせぬバトルシーンの数々は、確実にこの映画の見どころのひとつである。
 
 105分という上映時間内に、原作の要素をしっかり入れ、さらに0巻未読の本編からのファンも満足させる要素を盛り込み、急ぎすぎることなく、終始飽きさせることなく作品をまとめあげた監督の手腕も素晴らしい。筆者は通常、映画館で鑑賞している際それがどれほど面白い映画でも「お尻が痛くなってきた」「今1時間くらい見たからあと半分くらいかな」などの雑念が脳裏をかすめるのだが、本作品ではそれが生じなかった。これはものすごいことである。
 
 主題歌や劇中歌は、筆者の受け皿にないジャンルの音楽だったので正直よく分からなかったが、作品にはよく合っているように感じた。「この曲のよさがよく分からないな」と思いながら、それでも音楽に感動させられ落涙したのは初めてであり、不可解な経験であった。もっともこれは原作ファンが興奮して視聴に臨んでいる補正のせい、というのもあるのかもしれない。